なぜ、すぐに「辞めます!」という新入社員が増えているのか:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/3 ページ)
「入社前に聞いていた話と全然違う 」――そんな理由で、入社早々に会社を辞める新入社員が話題を集めている。なぜ、すぐに辞める新人が増えているのか。元凶は、どこにあるのだろうか?
なぜ、新人たちは辞めてしまうのか? その原因
会社からは「人手は足りない、内定を辞退する学生も多い、それで入社してすぐに辞める? もうどうにかしてくれ……」という悲鳴が聞こえてきますが、新人たちが受けるリアリティショックには会社に入る前の状況=キャリアレディネス(就職前準備)が強く影響しています。
つまり、学生時代のキャリア教育が、大人たちの勝手な都合により間違った形で行われてしまっていることが大きな問題なのです。
1991年の大学設置基準大綱で東京大学以外は教養部を廃止し、大学は社会のリソースから企業のニーズに応じる組織に変貌しました。拍車をかけたのがグローバル競争と少子化です。
経営者たちは「即戦力になるグローバル人材を育ててよ」と口をそろえ、少子化で生き残りをかける大学側は「ガッテン承知だ」と「就職に強い大学」を目指します。キャリア教育という名のもと、やれ自己分析だ、それ他己分析だ、コミュニケーション能力だと「即戦力教育」に明け暮れ、「面接をゲットするためのエントリーシートの書き方」だの、「面接を突破するコミュニケーション力の高め方」だの、「採用担当者に好印象を持たれる言葉」だの、「役に立ちそう!」なメニューをそろえまくりました。
本来、キャリア教育は「これをやれば役に立つ」というニーズに応える方法を教え込むことではなく、キャリアレディネスの向上を目的に行われる教育です。
- 自分自身のキャリアに対する欲求と興味を開発し、発見する
- 自分自身の能力と才能を開発し、発見する
- キャリア選択をできるだけ広くできるような学業成績を収める
- キャリアについて学ぶための、現実的役割モデルを見つける
――これらの課題に学生が主体的に取り組み、一つ一つ達成していくことでキャリアレディネスが高まり、会社組織への適応が促されます。
それは大学任せにすることでてもなければ、大学が学業をおろそかにしてまで手を貸すことでもない。
企業側のリクルーターが大学に出向き、「自分たちの思い、自分たちのやってきたこと、自分たちの会社のこと」を学生たちに伝え、「自分たちと同じ志を持って、歩いて行こうという意志がある学生」と出会うために汗をかくことです。
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