JR北海道「新幹線開業後」の明るい未来 札幌〜旭川間60分、札幌〜新千歳空港25分:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/6 ページ)
JR北海道が4月1日、「JR北海道グループ中期経営計画2026」を発表した。厳しい経営状況が続くが、明るい話題もいくつか見られる。今回はこの計画に書かれた明るい未来を、鉄道経済目線で紹介する。
JR北海道は2024年4月1日、「JR北海道グループ中期経営計画2026(以下、中期経営計画2026)」を発表した。厳しい経営状況が続くなかで、明るい話題もいくつか見られる。その代償としてローカル線の切り離しがあることが気がかりだけど、まずは会社本体に立ち直っていただきたい。
11年の石勝線列車脱線火災事故以来、数々の不祥事が明らかになり、14年に国土交通大臣から「輸送の安全に関する事業改善命令及び事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令」を受けた。そこからJR北海道の事業方針は「選択と集中」にシフトした。事業を北海道新幹線と幹線を中心とし、安全投資に重きを置く方針だ。
その方針のおかげで、選択されなかった事業は消えていく。利用者の少ないローカル線や駅の廃止が検討され、実行された。そればかりか、25億円を投資し、8年かけて開発していた新型特急車両「285系」も試作車落成直後に開発中止となった。285系は「複合式車体傾斜システム」と「モータ・アシスト式ハイブリッドシステム」を搭載した画期的車両で、札幌〜函館間の特急「北斗」に投入して、所要時間を2時間40分とする目論見だった。
【関連記事】JR北海道が断念した「ハイブリッド車体傾斜システム」に乗るまで死ねるか(16年5月6日の本連載)
これ以降コロナ禍まで、JR北海道といえば暗いニュースが目立っていた。しかしコロナ禍ごろから、明るいニュースも増えている。札沼線ロイズタウン駅の開業、「北海道ボールパークFビレッジ」隣接の新駅構想、「THE ROYAL EXPRESS - HOKKAIDO CRUISE TRAIN -」運行開始、観光特急車両「キハ261系5000番台」の投入と「HOKKAIDO LOVE! ひとめぐり号」の運行、ひがし北海道の「流氷物語号」や「SL釧路湿原号」の利用者回復などだ。事業のあり方が、従来の「これしかできない」から、「できる限りやってみよう」に変わってきた。
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