JR北海道「新幹線開業後」の明るい未来 札幌〜旭川間60分、札幌〜新千歳空港25分:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)
JR北海道が4月1日、「JR北海道グループ中期経営計画2026」を発表した。厳しい経営状況が続くが、明るい話題もいくつか見られる。今回はこの計画に書かれた明るい未来を、鉄道経済目線で紹介する。
北海道新幹線の強化
北海道新幹線の札幌〜新函館北斗間は、整備新幹線区画として時速260キロメートルで走行する設計だ。しかしJR北海道は約120億円の自己負担で時速320キロメートルに引き上げる。具体的には防音壁を嵩(かさ)上げし、トンネル出入り口の緩衝工(かんしょうこう)を延長する。整備新幹線の速度が時速260キロメートルに抑えられている理由は「音」と「空気」だ。線路の強度や車両の性能ではない。
整備新幹線は騒音問題をクリアするために、時速260キロメートルで環境基準をクリアできるコストになるように設計されている。だから、時速320キロメートルで環境基準をクリアできるように防音壁を嵩上げする。トンネル出口で発生する衝撃音は「トンネルドン現象」とも呼ばれている。トンネルの穴に高速な新幹線車両が突入すると、空気銃のような作用で空気が圧縮され、出口側でドーンという音が出る。これを緩衝工という筒状の工作物をトンネル出入り口に設置して和らげる。
時速320キロメートル化が実現すると、札幌延伸開業時に東京〜札幌間は5分程度短縮されて、4時間半を切るかもしれない。中期経営計画2026には「新幹線札幌開業を見据えた北海道新幹線のさらなる速達化の検討」とも記載されている。これはJR東日本が次世代「はやぶさ」向けに開発している試作車両「ALFA-X」で時速360キロメートル運転を目指していることに連動する。「ALFA-X」は走行試験で時速400キロメートルの安定走行を達成している。課題はもう車両ではなく、防音設備にある。
また中期経営計画2026には、収入の確保として「イールドマネジメントによる利用促進」と記載されている。これは例えば航空券のように、申し込み時期や空席状況によって特急料金などを上下させる仕組みだ。現在は閑散期、通常期、繁忙期、最繁忙期で料金を調整するほか、「えきねっと」の早期割引がある。これをもっと細かく運用する仕組みをつくるということだろう。これは在来線にも導入する。
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