2015年7月27日以前の記事
検索
連載

JR北海道「新幹線開業後」の明るい未来  札幌〜旭川間60分、札幌〜新千歳空港25分杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)

JR北海道が4月1日、「JR北海道グループ中期経営計画2026」を発表した。厳しい経営状況が続くが、明るい話題もいくつか見られる。今回はこの計画に書かれた明るい未来を、鉄道経済目線で紹介する。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

新しい観光列車「赤い星」「青い星」

 23年12月に北海道新聞が報じた「豪華観光列車」が、JR北海道の公式資料に初掲載された。中期経営計画はデザインイラストの掲載にとどまっているけれども、12月の北海道新聞記事では水戸岡鋭治氏にデザインを発注するとあり、その通りになった。

 「赤い星」「青い星」ともに4両編成で、新造ではなくキハ143形をタネ車(改造元となる鉄道車両)とし、17億円で改造する。キハ143形は普通列車用のディーゼルカーで、1994〜95年にオハフ51形客車から改造された。客車時代から数えると40年も経過している。新造費用までかけられないから、いまある車両を大切に使うしかない。運行開始は26年4月になるという。

 「赤い星」は釧路湿原編成という位置付けで定員は約100人。グリーン車以上の格付けで、個室や展望席がある。ラウンジ車両にキッチンがあり、食事付きのクルーズトレインとなる。茶室を用意するというから、訪日観光客は和風のおもてなし体験ができそうだ。主な運行経路として、冬から春にかけて釧網線を中心に運行する。

 私の予想は、回送の手間がかかる「THE ROYAL EXPRESS - HOKKAIDO CRUISE TRAIN -」を置き換えるつもりではないか。伊豆から北海道まで回送の手間がかかるし、THE ROYAL EXPRESSは四国ツアーも始めている。釧網線の「くしろ湿原ノロッコ号」の車両も老朽化で引退になる頃だ。6月には釧路湿原で活躍しそうだ。

 「青い星」は富良野・美瑛編成という位置付けで定員は約200人。普通座席で構成されるためお手軽な観光列車仕様になるだろう。グループ向けのボックス席や展望席を設置する。編成の名前の通り、富良野線「富良野・美瑛ノロッコ号」を置き換える可能性が高い。ノロッコ号の客車もオハ50系の改造車だけれども、機関車の老朽化、交換部品の不足が懸念される。

 「富良野・美瑛ノロッコ号」はラベンダーのシーズンのみの運行だから、それ以外の時期は道内各地の新ルート開拓になるだろう。宗谷線稚内方面、根室線根室方面(花咲線)など黄色線区(地域と相談して対策しつつ収支改善を検討する路線)も有力候補だ。

 「赤い星」の釧路湿原投入は、従来のノロッコ号に比べると普通車からグリーン車になるし、特急扱いとすればもっと値上げになってしまう(釧路〜塘路は640円、指定席券840円)。しかし私にはその価値があると思う。この地域は自然保護指定される以前に鉄道だけ通っていて、もう道路はつくれない。つまり鉄道が独占できる自然の風景だ。いわばサファリパークのようなもの。もっと運賃が高くてもいい。景色を見るだけなら普通列車に乗ればいい。中期経営計画では釧網線で「特別なノロッコ号の設定増や高単価化」という記載もある。「赤い星」導入前に高単価化を導入するかもしれない。

 その意味では「流氷物語号」も料金が安すぎる(乗車券970円、指定席券530円)。普通列車扱いで、流氷の海側が指定席になっているとはいえ、自由席は乗車券のみで利用可能だ。これは運行本数が少ない区間のため、一般客も乗れるようにという配慮でもある。しかし流氷の絶景は世界的にも珍しい。この車窓風景はもっと価値を認められても良いはずだ。網走、知床ウトロなど回遊観光地も多い。「赤い星」にふさわしい路線だ。あるいは「青い星」を急行扱いでどうか。


水戸岡鋭治氏デザインの観光列車が北海道を走る。実は水戸岡氏のデザインのルーツは北海道だ。アルファリゾート・トマム(現、星野リゾート トマム)のパンフレットにイメージイラストを描いた。それが福岡のホテル海の中道(現、ザ・ルイガンズ)のプロデューサーの目に留まり、デザインの道へ。そこでJR九州社長の石井幸孝氏(当時)と知り合い鉄道を手がけた(出典:JR北海道、JR北海道グループ中期経営計画2026

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る