「生ドーナツ人気」をブームで終わらせるのはもったいない、これだけの理由:スピン経済の歩き方(4/7 ページ)
生ドーナツがブームとなっているが、かつてのタピオカミルクティーやから揚げとは異なる可能性を秘めている。生ドーナツ人気を終わらせないためには、どうすべきか。
日本人は大正時代にもドーナツを食べていた
実はドーナツは、これまでブームになってきたティラミスやらマカロンやらカヌレやらという「輸入スイーツ」とは根本的に違うところがある。それは「120年前から続く日本の伝統菓子」ということだ。
「ミスタードーナツ」や「ダンキンドーナツ」のイメージがあまりにも強いためか、ネットやSNSで「1970年代にミスタードーナツとダンキンドーナツが上陸したことで日本にドーナツが入ってきた」という説明をしている人も多いが、これは誤りだ。
実はドーナツは明治時代に「現地化」に成功した日本の食文化なのだ。
例えば明治36年(1903年)、村井弦斎の小説『食道楽』には「ドウナツ」が登場する。他にも明治や大正にかけてさまざまな物語の中に、家に行った客人が「ドーナツをどうぞ」と勧められるシーンがよく描かれている。なぜかというとこの時代、ドーナツは各家庭でつくられる「日本の手作り菓子」だったからだ。
例えば、大正7年(1918年)に発行された海軍内のレシピ本「海軍四等主計兵厨業教科書」の中には「ドーナツ・ケーキ」のレシピがある。大正15年(1926年)に発刊された『家庭でできる和洋菓子』(婦人之友社)にも「ドーナツ」のレシピが登場している。
このようにさまざまな形でレシピが紹介されるということは裏を返せば、各家庭でさまざまなオリジナルレシピもあったということだ。この「人によってさまざまなレシピのドーナツがある」というのは、1世紀を経て生まれた「生ドーナツ」も同じだ。
ブームの火付け役である「I'm donut?」の「生ドーナツ」はブリオッシュ生地を用いているが、山崎製パンや大手コンビニのものは「生クリーム入りの生地」を用いている。つまり、「生ドーナツ」という大きなくくりはあるが、その製法や定義がカッチリと決められていないので、店によっていろんな個性豊かな「生ドーナツ」が生まれている。
この「多様性」こそが日本の食文化最大の強みだ。
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