“勝ち手法”だった「インフルエンサーマーケ」 急激に失速した2つの要因:日本のマーケティング最前線(2/3 ページ)
D2Cの“勝ち手法”だった「インフルエンサーマーケティング」が急激に失速した。「D2C」を取り巻く市場は厳しい中、企業は従来の「インフルエンサーマーケティング」の認識をアップデートする必要がある。
なぜ失速? 背景に2つの理由
こうして日本のマーケティングの一手法となったインフルエンサー施策だが、今まさに厳しい状況に追い込まれている。
その背景には以下の2つの理由がある。
(1)インフルエンサーの数は有限であり、消費者にとって飽きがくる
そのカテゴリーにおけるインフルエンサーの数は有限である。
例えば関西で飲食店をチェーン展開している企業があるとしよう。
その企業はまず、食レポを上げて人気を得ているインフルエンサーをリストアップし、DMや代理店を通してアプローチするが、人気なインフルエンサーは漏れなく他社のPRも引き受けている。
つまり、そのインフルエンサーをフォローしている人たちからすると、複数の飲食店のプロモーションを度々見ることになり、「この人昔は面白かったけど、最近は案件ばっかりだからなんか嫌だな」となる。
抜けがちな観点だが、このようにインフルエンサーの数はどの領域においても有限であり、「いくらでも簡単にインフルエンサーにPRしてもらえる」ことはないのだ。
(2)インフルエンサーが案件を選ぶようになる
企業からのPR案件を受けまくり、マネタイズだけを優先したインフルエンサーの投稿は「#PR」ばかりとなり、消費者からすぐに飽きられる。
特に近年はステマ規制がかなり厳しくなったため、本当は企業からお金を受け取ってPRしているのに、あたかも“自ら投稿している”ように見せかけてプロモーションすることもできなくなった。
結果、1日にPRできる数にも制限が発生し、「PR枠の在庫数」という概念が生まれた。
つまり、これまでは「インフルエンサーのPR枠>企業からの案件数」だったのが逆転し、企業がインフルエンサーのPR枠を奪い合う構図へと大局観が変化したのだ。
これらを背景に、10年前の「とにかくSNSでフォロワーの多い人にPRしてもらう」という時代から、「本当に影響力のあるインフルエンサーに、自社製品を本当に気に入ってもらう」時代へと変化したのだ。
関連記事
- D2Cはオワコンなのか 多くのブランドが淘汰された背景に“闇深い”事情
D2Cビジネスは冬の時代を迎えている。なぜ多くのブランドが淘汰されたのか……。背景に3つの理由がある。 - 「CPA至上主義」のマーケターはいずれ敗北する……背景に2つの理由
- 色んな外資マーケターに聞いてみた 実際「フレーム」なんて使えない、「思考力」を鍛えた方がいい理由
- 外資マーケターはなぜ“ちやほや”されるのか 背景に3つの事情
- 色んな外資マーケターに聞いてみた 高給取りをかなえる「マーケティング思考力」って結局何なの?
- 「優秀なマーケター=外資にいる」はもう間違い? 現代の優秀マーケターはどこにいるのか
- 「広告費0」なのになぜ? 12年前発売のヘアミルクが爆売れ、オルビス社長に聞く戦略
12年前発売のヘアミルクが爆売れし、2023年のベストコスメに選ばれた。「広告費0」「リニューアルも一切なし」を貫いてきたのになぜ? オルビス社長に戦略を聞いた。 - 「バズり」を逃さず「関係ない商品」も売る――オルビスの緻密な戦略がすごい
「広告費0」「リニューアル一切ナシ」にもかかわらず、熱狂的なファンを獲得し続け大ヒットしたオルビスの「エッセンスインヘアミルク」。同社は「バズり」を逃さず、「関係ない商品」も売る緻密なクロスセル戦略に成功している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.