「バズり」を逃さず「関係ない商品」も売る――オルビスの緻密な戦略がすごい:2年間で10倍以上売れた(1/2 ページ)
「広告費0」「リニューアル一切ナシ」にもかかわらず、熱狂的なファンを獲得し続け大ヒットしたオルビスの「エッセンスインヘアミルク」。同社は「バズり」を逃さず、「関係ない商品」も売る緻密なクロスセル戦略に成功している。
発売から12年たった2023年に「@cosmeベストコスメアワード2023 総合大賞」を受賞したオルビスのヘアケアアイテム「エッセンスインヘアミルク」。「広告費0」「リニューアル一切ナシ」にもかかわらず、熱狂的なファンを獲得し続け、発売から今日まで右肩上がりで販売数を伸ばしてきた。
<前編:「広告費0」なのになぜ? 12年前発売のヘアミルクが爆売れ、オルビス社長に聞く戦略>
同商品は22年にXでバズったことをきっかけに加速して売り上げを伸ばし、21〜23年の2年間で販売数は10倍以上の伸びを見せた。同社では、Xのバズを生かして一気に認知を広げるべくさまざまな戦略を講じただけでなく、独自のクロスセル戦略によってブランド全体の売り上げも押し上げたという。小林琢磨代表取締役社長に具体的な戦略を聞いた。
数少ない営業部隊が奮起 超スピーディーに販路を拡大
22年の春、エッセンスインヘアミルクがバズってから、同社はまず「販路の拡大」に取り組んだ。それまでは公式Webサイトやオルビスの店舗でしか購入できなかったが、急激なニーズに応えるためにドラッグストアやコスメショップ、バラエティストアなどでの取り扱いを急いだ。
しかし、オルビスはこれまで直販をメインとしていたため、そもそも営業部隊が小規模で、ドラッグストアなどとの取引が少なかった。メンズ向けなどの一部商品はドラッグストアでの販売も実績があったため、そのルートを活用しつつ、販路拡大に向け急ピッチで営業をかけた。
「当社の事業は、通販と直営店が売り上げの95%ほど。(小売店に卸す)B2B領域は約5%ほどしかありませんでした。数少ない営業のメンバーが『このバズのタイミングを逃しちゃいけない』と獅子奮迅の頑張りを見せてくれたため、かなりスピーディーに販路拡大を実現できました」
「Xでバズり話題を集めたことによって一気に想起が上がった一方で、新しいお客さまはブランドロイヤリティがまだない方々です。この状態では『Place』が非常に重要で、身近で買える環境がないと『わざわざ販売サイトに登録までして買わなくていいか』と離脱につながってしまう可能性もあります。22年春にバズり、22年の秋ごろにはドラッグストアをはじめとする多くの店頭に並べる――このスピード感で進められたことはよかったですね」
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