「バズり」を逃さず「関係ない商品」も売る――オルビスの緻密な戦略がすごい:2年間で10倍以上売れた(2/2 ページ)
「広告費0」「リニューアル一切ナシ」にもかかわらず、熱狂的なファンを獲得し続け大ヒットしたオルビスの「エッセンスインヘアミルク」。同社は「バズり」を逃さず、「関係ない商品」も売る緻密なクロスセル戦略に成功している。
独自の戦略で売り上げ拡大 スキンケアへのクロスセルも増加
ヘアミルクのバズを生かし、同社別商品へのクロスセルなど、ブランド全体の売り上げを引き上げる取り組みも強化した。まず、ヘアケアの別商品「トリートメントヘアウォーター」とのセット販売を実施し、ヘアミルク、ヘアウォーター両方で販売数を伸ばした。
とはいえ、オルビスはヘアケアが主力商品ではない。スキンケアやメーク商品へのクロスセルを起こすために何をしたのか。小林社長は「ヘアケアからスキンケアなど、飛び地のクロスセルは非常に難しい」と話す。
「最初にヘアケア商品から商品を購入した人にとって、オルビスはヘアケアのブランドというイメージが強く、スキンケアへのクロスセルは非常に難しいんです。
また化粧品業界では、“与えるもの”と“洗い流すもの”では、消費者マインドが大きく異なる傾向があります。実際、化粧水と乳液はラインで使用するのに、洗顔やクレンジングは別ブランドの商品を使用する方が多いですよね。従って、シャンプーのクロスセルもそこまで伸びない傾向があります」
そこで同社では、ヘアミルク同様にバズっていて、想起の高い商品同士のクロスセルに目を付けた。23年にさまざまなベストコスメに選ばれ、大ヒットを記録した日焼け止め「リンクルブライトUVプロテクター」とヘアミルクのクロスセルを提案したのだ。
「(1)髪をサラサラにしたいというニーズがあるときにヘアミルク、(2)乾燥しない日焼け止めが欲しいというときにリンクルブライトUVプロテクター――両商品とも大きくバズったため、別々の悩みで想起が高まっているんです。両方の想起が高いので、一緒に見せると『あ、どっちもオルビスの商品か。せっかくオルビスの店にいるなら両方買ってしまおう』と想起の高い者同士のクロスセルが生まれます」
「さらに、日焼け止めという顔に塗る商品を使用していただき、好感を持ってもらえたら、『スキンケアの技術も高いのか』と化粧水や乳液などのクロスセルも生まれます。日焼け止めと当社の主力商品であるスキンケアライン『ORBIS U』『ORBIS U dot』のクロスセルも高いので、ブランド全体の売り上げアップにつなげることができました」
今後もスキンケアブランドであるというギャップを生かし、ヘアケア領域の新商品の開発などに注力する方針だ。
「冬の乾燥をはじめとするもう一段深い悩みにアプローチする商品などを作り、与えるヘアケアとしてのクロスセルも強化していきたいですね。スキンケア技術やスキンケア発想を生かしたプロダクトの開発も検討していきます」
<前編:「広告費0」なのになぜ? 12年前発売のヘアミルクが爆売れ、オルビス社長に聞く戦略>
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