なぜ「案内所+バス」にベッドを置いたの? 東海バスが宿泊施設を始めた背景:「次の駅まで」に読めるハナシ(2/3 ページ)
小田急電鉄グループの傘下で路線バスを運行する東海自動車が宿泊施設をオープンした。バス会社がなぜ畑違いの事業を始めたのか。取材したところ……。
「宿泊施設」決定まで
かつて伊豆半島各地を走っていたバスは、当時のレトロカラーに塗装して、車両の中央から後方の座席を撤去し、3台のベッドを設置した。クラクションとライトは取り除いたものの、運転席に座ってハンドルや行先表示ボタンの操作を楽しめるようにした。
「ばすてい」にスタッフは常駐していない。「宿泊の予約→チェックイン→チェックアウト」といった一連の手続きは、インターネットで完結する。予約時にカギの暗証番号とチェックインに必要なコードが届く、といった仕組みである。宿泊料金は1泊3万4000円からで、最大5人まで受け入れている(1日1組限定)。
予約を受け付けたのは、2023年11月10日の午後12時から。「まだかまだか」と待ちわびていた人もいたようで、受け付けがスタートして数分後に予約が入った。オープンから6カ月近くになるが、土日を中心に幅広い層が利用しているという。「観光客またはバスファン」どちらが多いのか尋ねたところ、いまのところ「バスファン」の利用が目立っているようだ。
それにしても、東海バスはなぜ“畑違い”とも言える事業を始めたのか。「宇久須案内所」はかつて、鉄道との直通乗車券を販売していたことから、地元住民からは「宇久須駅」と呼ばれていた。1950年に生まれた建物をこのまま壊すのはもったいないと考え、同社は3つの案を絞り出した。
1つは、物件を貸し出すこと。建物を壊して、そこに新しい物件を建てるのはどうかというアイデアだ。賃貸での収益を得ようとしたが、広さに問題があった。冒頭でも紹介したように、延べ床面積は71.9平方メートルしかないので、大きな物件を建てるのは難しく、実現を断念した。
2つめは、カフェを始めること。同社は数年前にレストラン事業を始めているので、飲食業の知見はある。しかし、商圏の人口は少ないので、利用者はそれほど多くはないかもしれない。採算が合わないのではないかとソロバンをはじき、この案も却下。
そして、3つめが宿泊施設である。地元の人が利用するカフェではなく、外から観光客を呼び込むことはできないか。地域活性化を狙って、いまの案に決定した。
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