ECのレコメンド機能、商品訴求だけでは不十分 購入につなげる「他の要素」とは:グッドパッチとUXの話をしようか(1/2 ページ)
ECの進化に伴い、消費者の好みに合わせた商品がおすすめとして表示されるようにもなってきました。しかし、そのレコメンドはきちんと「購入」に結びついているのでしょうか?
連載:グッドパッチとUXの話をしようか
「あの商品はどうして人気?」「あのブームはなぜ起きた?」その裏側にはユーザーの心を掴む仕掛けがある──。この連載では、アプリやサービスのユーザー体験(UX)を考える専門家、グッドパッチのUXデザイナーが今話題のサービスやプロダクトをUXの視点で解説。マーケティングにも生きる、UXの心得をお届けします。
ジェフ・ベゾス氏が自宅のガレージでオンライン書店「Amazon.com」を創業したのが1994年。およそ30年たった今、小売企業にとってECはもはや切っても切り離せない存在です。
Amazonや楽天市場のようなECモールだけでなく、自社独自のECサイトやアプリを展開する企業も増加。いかにECに人を呼び込み、購入を促すかを考え「データ活用」や「パーソナライズ」に注目する企業は少なくありません。
ECにおけるデータ活用やパーソナライズの例を調べると、「閲覧履歴や購入履歴に基づいてレコメンドを出す」「ユーザーが入力したデータに基づいて、商品広告バナーを出し分ける」といったものが多く、多くの企業が生活者の過去の行動やデータに合った商品情報の提示によって、購入を促そうとしていることが分かります。
しかし、本当にそれで商品を購入したくなるかというと疑問が残ります。過去に買った商品に似た商品の情報が提示され「もう似たようなモノがあるから、要らないのに……」と感じた経験、皆さんはありませんか?
ユーザーの体験を意識しないと、良かれと思って提示した情報(レコメンド)によって、逆に購買意欲が削がれてしまう──といったことにもなりかねません。
では、さまざまなECサイト・アプリが溢(あふ)れるこの時代に、あるべき「良いECの体験」とはどのようなものなのでしょうか。この記事では、ユーザーの購入体験という側面から、あるべきパーソナライズやレコメンドの姿を考えていきます。
レコメンドすべきは「商品」ではない 購入につなげる「他の要素」
ユーザーの購入体験を考えるにあたって、今回は購買意思決定の行動モデル「AISAS」を使いたいと思います。AISASとは、以下のようなユーザーの行動・思考を表す頭文字から名付けられた行動モデルです。
- Attention:何かしらのきっかけで商品を知る
- Interest:興味を持つ
- Search:さまざまなサイトや口コミを見て比較検討する
- Action:購入に至る
- Share:その過程や結果をSNSなどでシェアする
このモデルに沿って、パーソナライズやレコメンドがユーザーにどのような影響を与えているのかを見ていきましょう。
例えば、パーソナライズの施策としてよく行われる商品情報提示は、商品を知るきっかけを作る「Attention」および、人によっては興味を持つ「Interest」の一部を担えますが、比較検討まではカバーしにくい仕組みといえます。
自分が商品を買うときの行動を思い出してみてください。買う前にもう一度検索エンジンで類似商品を探し、性能が類似したさらに高品質な商品や低価格な商品も含めて比較検討を行うのが一般的かと思います。
これだとECサイトから離脱してしまいますし、他のサービスや商品に興味が移ってしまう可能性もあります。単に商品を提示するだけでは、購入の決定打にならない。現行のパーソナライズ施策の限界ともいえるでしょう。
しかし、最近では商品ではなく「ストーリー」を提示することで、この壁を突破している例が出てきています。
例えば、ユニクロのECサイト(アプリ)では、商品単体ではなく、その商品が販売されるまでのストーリーを特定の商品を閲覧したユーザーに対して掲載しています。
ここでは通常の商品ページでは見られない、シルエットのこだわりや使用感、コーディネートなど、その商品のスペック以外の情報をアプリのお知らせ機能を通じて提供しています。
一般的に、閲覧した商品を再度おすすめする場合「気になっているこの商品を購入しませんか?」と商品自体をレコメンドしますが、切り口を変えて、商品の魅力を伝えることにより購入意欲を高める工夫がされています。
価格やスペックではない価値を提示する意義は、他社の製品との比較検討を「させない」という点にあると考えられます。商品独自のこだわりやストーリーは、他と比較できるものではありませんし、コーディネートなど情報は口コミによる「安心の担保」と似た効果が得られます。結果として「Search」の部分を飛ばす形で、スムーズに購入へと進めるのです。
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