新卒の初任給バブル、割を食うのはどの世代か?(1/2 ページ)
2024年の春闘で「満額回答」が続いている。新入社員には喜ばしいニュースだが、その裏で割を食うことになる世代もいる。しわ寄せがどこに向かうのか、解説する。
少子化による人材獲得競争が呼び水となり、新卒の給与が急激に増加しました。それに伴い、新入社員と既存社員との給与の逆転減少を防ぐため、社員全員の給与のベースアップを実施する企業も増えています。
しかし、ベースアップできる企業は原資的に限られています。そのしわ寄せはどこに向かうのか、解説します。
中小企業も新卒者の給与アップに追随
大卒者の初任給は、企業規模関係なく横並びの業界が大半でした。ただここ数年は状況が変わり、ファーストリテイリングのように2023年から大幅にアップして30万円を超える初任給を出す企業も出てきました。
今年度も優秀な人材を確保するため、昨年度と比べて1万円以上アップした企業は増えています。例えばニトリホールディングスでは、大卒の新入社員を25万5000円から27万円に引き上げました。
こうした流れは中小企業にも波及しています。全国中小企業団体中央会の「中小企業労働実情実態調査」によると令和5年度の初任給は、技術系で20.8万円、事務系で20.6万円、前年と比べて1.7%増加しています。
全社員の賃上げ、実行できない企業はどうなる?
初任給のアップに伴い、企業は賃金制度の見直しを行わなければなりません。例えば、毎年の昇給額を5000円としている企業が新卒者の給与を1万円上げた場合、昇給の上げ幅を1万円以上にしなければ新卒者よりも2年目の社員の給与が少なくなります。
経験者よりも新卒者の給与が高くても法律的には問題ありません。とはいえ、人手不足の今、せっかく採用した若手人材の離職を防ぐため、20代若手社員には賃上げを行う企業が多いと思われます。
こうした会社の労働者全員を対象とした賃金水準の底上げはベースアップ(ベア)と呼ばれています。定期昇給と似ていますが、「個人」の年齢や勤続年数、仕事の成果に応じて昇給する定期昇給に対して、ベアは、社員全員の給与を一律で上げるという違いがあります。
ベアは、基本給の3%といったように割合を乗じるのが一般的です。昨今の物価上昇に対応するため、ベアの必要性が叫ばれています。連合の発表によると、2024年春闘における中小企業の賃上げ率は3%(参照:PDF)を超えています。
ただしベアを実施すると企業の負担も大きいため、収益が出ていない企業ではその原資の捻出に苦労するでしょう。また同一労働同一賃金に対応するため、以前は支給していなかったパート社員に対しても賞与を支給するか検討しなければなりません。
一律でベアを実施するのではなく、特定の年代に絞り実施する企業もあるようです。経団連の「2023年人事・労務に関するトップマネジメント調査結果」にベアの具体的配分方法を調査した項目がありますが、回答企業の30.2%が「若年層(30歳程度まで)」としています。初任給の引き上げに伴い、20代社員の賃金は上がるものの、中高年層にまでその恩恵が回らない企業もあると推測できます。
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