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「ソリューション営業」はもう古い! これからの時代に求められる「インサイト営業」の有効性前編(2/4 ページ)

日本では長年、ソリューション営業が正義とされ、課題解決型の営業アプローチが求められてきました。一方昨今米国では、市場動向や顧客状況の力学に迅速に適応し、顧客が自覚をもしていない未知のニーズを解き明かす「インサイト営業(Insight Selling)」が新たな営業スタイルとして注目を集めています。日本で正攻法とされていたソリューション営業は限界を迎えているのです。

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ソリューション営業と何が違う?

 インサイトは「洞察」や「見識」という意味で、単に顧客のニーズを満たし課題解決をするだけではなく、未知の問題や機会に対する洞察を提供し、顧客に新たな価値を創造する営業スタイルを指します。インサイト営業は、「顧客ですら気付いていない」潜在的な問題や課題を明らかにし、その解決を通じて顧客との深い関係を築くことを目指していきます。

 ご存じのようにソリューション営業は、顧客が気付いている「顕在化した課題」に対して、自社の製品やサービスを用いて課題解決を提案する営業スタイルです。自社の製品やサービスで解決できる課題を逆算し、その課題が顕在化している顧客にアプローチします。

 営業担当は自社のソリューションにつながるような課題を引き出そうと質問力を磨くことが重要でした。つまり、顧客が直面している直近の課題解決に焦点をあて、短期的な成果と効率性を追求する営業スタイルだということです。

 これは、顧客が課題は分かっているが、解決方法が分からないという場合には有効でした。しかし今は、顧客はインターネットやSNS、ChatGPTなどで解決策を調べ、情報を手に入れられます。さらには、この製品はどのように購入したらよいのか、どのような要件でベンダー選定したらよいのかまで、営業に聞かなくても顧客自身で調査できるようになってきています。営業にアプローチしたタイミングで「顧客の購買プロセスの7割が完了している」という調査結果は、皆さんも納得感があるのではないでしょうか。

 既に課題が顕在化され、解決法を顧客自身が分かっている状況では、競合にも同様の情報が共有されているため差別化しづらく、価格勝負になるのは目に見えています。RFP(Request For Proposal、提案依頼書)が提示されたときには、すでにドラフト1位のベンダーが大体決まっているという状態で、営業担当者が自社の優位性を訴求できる状態ではないということです。また、「購買プロセスの前半で既にベンダー選定を終えている」ケースも多いのではないでしょうか?


インサイト営業とソリューション営業の比較(筆者作成)

 一方、インサイト営業は、顧客が気付いていない「潜在的な課題」の解決を目指すため、顧客の現状だけではなく未来にも目を向けた、より戦略的で長期的な視点を持ちます。顧客が問題を特定する前段階からアプローチし、数ある潜在的な課題の中から解決すべき課題を顧客と合意することで、商談を優位に進めることができるのです。

 ビジネスにおける競争環境が目まぐるしく変わるVUCAの時代に突入した今、将来成功するには、何を問題と捉え、どんな課題を解決すべきなのか……その本質を捉えられていない顧客も少なくありません。そこで、インサイト営業ではこの「問題を特定」し、「潜在的な課題」を見いだし、整理して言語化することに焦点を当てていきます。

 ここで、理解を深めるために病院に訪れた患者とお医者さんのやりとりをテーマに、ソリューション営業とインサイト営業の違いを見てみましょう。

<ソリューション営業の場合>

医者:こんにちは、どのようなお悩みでしょうか?

患者:こんにちは、最近ひどい頭痛があり、夜もなかなか眠れなくて困っています。

医者:それは大変ですね。では、眠れるように睡眠導入剤と頭痛に効く痛み止めを処方しましょう。

(患者の心の声):またただの薬か……。これで一時的には楽になるかもしれないけれど、なぜこんなに頭痛がするのか、夜に眠れないのかの理由が分からないままだ。

患者:はい、試してみます。ありがとうございます。

<インサイト営業の場合>

医者:こんにちは、どうされましたか? 何かお困りのようですね。

患者:こんにちは、頭痛がひどくて、それに夜もろくに眠れないんです。

医者:それは苦しい状況ですね。頭痛と睡眠不足は相互に影響を及ぼすことがあります。ストレスや不安、あるいは生活習慣が原因かもしれません。最近、生活に何か変化はありましたか?

患者:4月から部署異動があり、慣れない仕事で目下勉強中です。小6の娘のお受験で家庭内がちょっとギクシャクしています。

(患者の心の声): 確かに、最近の仕事のプレッシャーもあるし、娘と妻の関係をうまく収束できない自分の不甲斐なさをストレスに感じてるのかもしれない。これまでの医者はそこまで深く考えてくれなかった。

医者:今回は一時的な痛みを和らげるための薬を処方しますが、同時にストレスマネジメントのセッションも提案します。また、睡眠の質を向上させるための生活習慣のアドバイスも行います。長期的な改善を目指しましょう。

(患者の心の声):このアプローチなら、本当の原因に対処できそうだ。眠れない夜と頭痛に別れを告げられるかもしれない。希望が見えてきた!

患者:その提案、とても興味があります。ぜひ詳しく聞かせてください。

 このように、ソリューション営業が単に症状の緩和に焦点を当てるのに対し、インサイト営業は患者の生活全般を考慮に入れ、より根本的な問題に対する洞察を提供。患者のライフスタイルやストレスレベルを詳しく把握し、症状の原因を探り、適切な解決策を提案しています。

 このアプローチにより患者は自分の状況に対する理解を深め、長期的な改善への道筋が見えてきます。患者は医者の提案に対して希望を抱き、積極的に協力したいと考えるようになるのです。

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