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学びを「隠す」日本人 リスキリングが進まないワケ(2/3 ページ)
昨今、リスキリング・ブームと人材開発の活性化により、各企業で「学び合う組織づくり」への関心が高まっている。しかし、パーソル総合研究所が実施した「学び合う組織に関する定量調査」では、日本は学ぶ個人が少ないのと同時に、学んでもそれを周囲に共有しないという、学びの「秘匿化」の傾向が明らかになった。
「コソ勉」する日本人
さらに筆者らの最新調査で発見されたのは、日本のビジネスパーソンは自主的に学ばないだけではなく、学びを「秘匿」する習慣も広く存在するということだ。2023年というリスキリングが話題になった時期の調査でも、56.2%の学習者が、自身の学びやその内容を同僚に共有していなかった(パーソル総合研究所「学び合う組織に関する定量調査」 )(図2)。
学んでいる管理職ですら、47.8%が学びを同僚に言わない。また、具体的な専門知識や学び方など、自分の学びについての相談も約6割が周囲にしたことがない。こうした周りに見られないようコソコソ勉強する、「学びの秘匿化」もまた、日本の課題の奥深さを示している。
職場で可視化される学びは2割以下
この「学びの秘匿」の習慣は、過去の研究でも指摘されてこなかったが、学び合う組織づくりにおいては極めてクリティカルな問題だ。図3のように、ただでさえ少ない主体的な学習が職場で秘匿化されることで、職場において可視化される(共有される)学びは、全体で2割以下になってしまう。いくら一部の従業員が積極的に学んだとしても、それが伝播(ぱ)しないということは、組織マネジメントの観点から見ると大きなハードルだ。
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