東海道新幹線の「品川駅折り返し列車」構想は、どうなった?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)
東海道新幹線に「品川駅折り返し列車」構想があった。東海道新幹線の品川駅構想は、元は国鉄時代にあったが一旦白紙となった。その後、JRグループ発足3年後にJR東海が品川駅構想を再起動。その結果、2003年に品川に東海道新幹線の駅ができた。駅はできたが、品川駅折り返し列車はない。なぜか。
品川折り返しの定期列車がない
新幹線品川駅が完成し、JR東海が期待した新幹線増強策「品川駅折り返し」が可能になった。しかし、実は現在まで品川折り返しの定期列車はない。現在は品川駅6時ちょうどの始発列車「のぞみ99号」があるだけだ。上りの品川終着の列車もない。なぜか。
振り返ってほしい。最初の品川駅構想では「下り15本」が目標だった。そして現在、「のぞみ12本ダイヤ」が完成し、1時間にひかり2本、こだま2本を加えて「下り19本」を達成している。当初は、300系で最高時速270キロメートル、「ひかり」「こだま」だけを想定していた。しかし、その後の技術の進歩などさまざまな取り組みによって、最高時速285キロメートルの「のぞみ」中心のダイヤになった。
「品川駅折り返し」を設定しなくても、増発の目的を達してしまった。いや、ここからさらに品川駅折り返しを設定すればもっと増発できそうだが、それは東京側の話。路線全体でこれ以上の容量はないのかもしれない。さらにいうと、リニア中央新幹線が開業すれば、これ以上の増発も不要。減便だって可能になるかもしれない。
すでに多くの品川駅ユーザーが感じているように、東海道新幹線品川駅は、客にも利点が大きい。山手線の南側の沿線、そこにつながる東急電鉄沿線、京急電鉄沿線を利用する客が東京駅まで行かなくて済む。そこに品川駅折り返し列車ができれば、自由席に座るチャンスも増える。これがなぜ実現しないのか。1つの答えとして、繁忙期の自由席は「廃止」という流れがあるだろう。
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