資生堂の美容部員がインフルエンサー化 華やかな投稿に隠れたSNS戦略とは(4/4 ページ)
美容部員と聞くと、百貨店やコスメショップの店頭に立ち、一対一で顧客の話を聞きながら接客するというイメージを持つ人も多いだろう。その一方で、資生堂インタラクティブビューティー(東京都中央区)には、デジタルでの活動に特化した美容部員が約40人在籍している。その背景について、同社に話を聞いた。
フォロワー数や再生数、どうやって評価する?
現在、オムニPBPの選考は年に1回、公募で行われる。資生堂グループには社内交流制度(希望する部署やチームへの異動ができる制度)があり、それを活用したものだ。任期は基本2年だが、フォロワー数が多い人気インフルエンサーへ成長すると、任期を延長するケースもあるという。フォロワー数が5.1万人のあーちゃん(5月24日時点)は、オムニPBPとして3年ほど活動している。
SNSでは、フォロー数、いいね数、再生数が、ライブコマースでは視聴者数やコメント数などさまざまな数値が可視化される。そうした中で、オムニPBPの人事評価はどのように行っているのだろうか。
「目標はプロジェクト全体・チーム・個人で設定します。具体的な項目や数値などは非公開ですが、適切な評価をするため今も試行錯誤を続けています」(河原氏)。ある投稿や動画が突然バズって一気に数字が伸び、「半期の目標を一気にクリアした!」といううれしい悲鳴もあるそうだ。
オムニPBPは、定期的に投稿を振り返るミーティングを実施。伸びた投稿に対しては「なぜこの商品・テーマを取り上げたのか」「編集の際に意識したこと」「投稿文言で工夫したこと」などを、そうでない投稿に対しては「どこに力を入れて撮影・編集したのか」「投稿者による伸びなかった要因分析」といったことを深掘りする。ここでメンバー全員が積極的に意見を出し合い議論することで得た学びを、次の投稿に生かしている。
しかし、こうした学びを反映した投稿や動画が、ヒットするとは限らない。河原氏は「SNSでの発信は、再現性が必ずしもあるわけではありません。それがオムニPBPを評価する上で面白いところでもあり、難しいところでもあります」と話す。
これからのオムニPBPが目指すこと
オムニPBPの今後について、河原氏は2つを挙げた。「1つは発信力と売上貢献の強化を続けることです。もう1つは、これまでオムニPBPで蓄積したノウハウを、全国のPBPや資生堂グループ全体のデジタル化、DXに活用していきたいと考えています」
あーちゃんは「自身の発信力を上げることで、紹介した商品の価値も上げられるようなオムニPBP」を目指しているという。顧客からは「オムニPBPの〇〇ちゃんの投稿を見て購入しました」「オムニPBPの〇〇さんが紹介していたから買いました」という声が寄せられており、こうした購買行動を「〇〇ちゃん、〇〇さん買い」と呼んでいる。紹介する人の影響力を高めることが、商品の認知度アップや売り上げ向上につながるケースもあるのだ。「あーちゃん買い」につながるよう、個人の影響力をより高めることを目指しているという。
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