資生堂の美容部員がインフルエンサー化 華やかな投稿に隠れたSNS戦略とは(3/4 ページ)
美容部員と聞くと、百貨店やコスメショップの店頭に立ち、一対一で顧客の話を聞きながら接客するというイメージを持つ人も多いだろう。その一方で、資生堂インタラクティブビューティー(東京都中央区)には、デジタルでの活動に特化した美容部員が約40人在籍している。その背景について、同社に話を聞いた。
社員がインフルエンサー化する強み
資生堂はこれまでも、インフルエンサーを起用した企画を行ってきた。社外のインフルエンサーではなく、社員であるオムニPBPが発信することのメリットとは何だろうか。「一番は資生堂というブランドに対する熱量が桁違いであることです。PBPとして培った、商品や美容に対する豊富な知識量も武器の1つだと思います」(河原氏)
あーちゃんは「等身大であること」が大きなポイントだと指摘する。「雲の上の存在ではなく、自分たちの身近な存在であると感じてもらえていることが強みだと思います。また、私たちは店舗での接客経験があり、日々多くのお客さまの悩みを聞いてきました。この経験から多くの人の悩みを解決する、かゆいところに手が届くような投稿内容も差別化要因ではないでしょうか」
投稿内容はオムニPBPの裁量に任せる部分が多い一方で、投稿前のチェック体制は厳重だ。実際に投稿を始めてみて難しいと実感したのが、薬機法に関わる表現だという。
【訂正:2024年5月27日14時10分 初出で「薬事法」と表記しておりましたが、誤っておりました。「薬機法」に訂正しお詫びいたします。】
薬機法とは医薬品や化粧品などの有効性・安全性などを確保するため、一定の基準や取り扱いを定めた法律のこと。「店頭であれば、口頭で詳しく説明したり実際に手に取って見せたりすることができます。ですが、投稿では文章や動画のみで、どんな小さな誤解も生まないような伝え方をしなくてはならないのです」(あーちゃん)。そのため、オムニPBPは定期的に勉強会を実施し、薬機法の知識をアップデート。勉強会で得た知識と日々の投稿から得た経験値を組み合わせながら、より分かりやすい伝え方を模索しているという。
投稿の頻度やスケジュールもオムニPBP自身が管理している。投稿頻度とフォロワー数は比例するので、月に10投稿は心掛けているそうだ。スケジュールを組む際にもコツがあるのだとか。前述の通り、薬機法に関するチェックには時間がかかる。そのため、スキンケアについての投稿は完成するまで2週間くらい時間がかかることも。「一方で、メーク方法などの動画は比較的短期間のチェックで済みます。こうした投稿内容ごとの事情に合わせて、撮影日時や投稿日を調整しています」(あーちゃん)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
異例の350万本突破 リップモンスターが口紅市場で“モンスター級”になれた理由
コロナ禍により、化粧品市場は大きな打撃を受けた。2020年は6670億円(前年比88%)と大きく落ち込み、21年もほぼ同水準となった。最大の要因はメークアップ化粧品で、特にファンデーションや口紅など、マスクを着用すると崩れたり隠れたりしてしまうカテゴリーの落ち込みが大きくなっている。こうした状況にあって、累計販売本数が350万本突破するほどの人気商品となっているのが、KATEの落ちにくい口紅「リップモンスター」だ。
物価高なのになぜ? 1万円超えの「諭吉コスメ」が売れ続けるワケ
美容系総合ポータルサイト「@cosme」を運営するアイスタイル(東京都港区)は12月7日、「@cosmeベストコスメアワード2023」を発表した。3月にマスク着用が任意となり、人々のメークに対する意欲が回復する一方で、物価高により家計が圧迫されるなど、化粧品業界にとっては、追い風と向かい風の両方が吹く1年となった。
「広告費0」なのになぜ? 12年前発売のヘアミルクが爆売れ、オルビス社長に聞く戦略
12年前発売のヘアミルクが爆売れし、2023年のベストコスメに選ばれた。「広告費0」「リニューアルも一切なし」を貫いてきたのになぜ? オルビス社長に戦略を聞いた。
「バズり」を逃さず「関係ない商品」も売る――オルビスの緻密な戦略がすごい
「広告費0」「リニューアル一切ナシ」にもかかわらず、熱狂的なファンを獲得し続け大ヒットしたオルビスの「エッセンスインヘアミルク」。同社は「バズり」を逃さず、「関係ない商品」も売る緻密なクロスセル戦略に成功している。





