進まぬ日本企業のDX 米ITサポートCEOが明かす“構造的欠陥”とは(2/2 ページ)
日本企業のITの課題を、リミニストリート米本社CEO兼会長のSeth Ravin(セス・ラヴィン)氏と、日本法人社長の脇阪順雄氏に聞いた。
決断できる経営者を増やしていく
――そういった中で、リミニストリートは日本でどのような存在感を発揮できると思いますか。
ラヴィン: 日本企業がIT部門を単なるコストと見なしていたものが、近年ではITこそがビジネスの戦略的コアと見なすようになり、軸足が変わってきつつあります。ITこそが競争力の源泉だということを皆さんが考え、実践していかねばならない時代に来ています。
例えば小売を例にしますと、オンラインで注文した30分後には、その荷物を出荷しているサービスもあります。これらを全てサポートしているのがITです。ITをいかに活用できるかが、企業の競争力のカギになっています。
インターネットバンキングも好例だと思います。例えば銀行では、従来のように店舗型の銀行があるのに対し、店舗が全くないイーバンクのような銀行もあります。当社の顧客の一つに、例えばHSBC(香港上海銀行)というグローバルの大きな銀行があります。この銀行は10万人規模の従業員を抱えている銀行ですが、当社ではこの給与計算部門のサポートをしています。われわれが事務的なITを支援することで、インターネットバンキングのシステム構築に、HSBC本体のIT部門が専念できるようにする狙いがあります。
脇阪: HSBCのケースでは、インターネットバンキングの業界で勝つために「モバイルでいかに使いやすくするか」が命題になっている背景もあります。重要なのは、金利の高さではなく、いかにユーザーにとって使いやすいものにするのか。これが重要になってきます。銀行にとって、ここがIT部門の勝負所とも言えますから、われわれはそれ以外の業務を支援し、本体は主戦場に専念できる環境を整える。これも当社の業務になります。
――日本企業のIT部門の課題を解決するためには、どうすればいいと考えますか。
脇阪: ITベンダーが「あなたの会社はこうすべき」とアドバイスすること自体はいいと思います。でも決めるのは経営者なのです。例えば今注目されているAIでも、全ての企業が横並びにAIにフォーカスする必要はないわけですよね。全員が同じ選択をするのだとしたら、そこには勝者も出なければ敗者も出ないことになります。
しかし実際には、ビジネスでは勝者も出れば敗者も出ます。そこには経営者の判断の違いがそれぞれあるからです。AIがすごい力を持つかもしれないし、持たないかもしれない。これを考えるのは経営者なのです。
しかし、こうした判断をせずして「うちの会社は何をやったらいいですか」と問うのは、おかしいと思います。当社ではこの問いに対して「あなたはこれをやるべきです」という助言はしていません。先ほどのHSBCの例のように、本業におけるITの戦略的判断は、その企業に決めてもらうようにしています。
――2024年の世界のITトレンドをどう見ていますか? 特に日本企業の動きはどうなっていくと考えていますか。
ラヴィン: ITはもはやコストセンターではなく、ビジネス戦略の中核にあるといったマインドセットに徐々に変わってきています。今後は日本企業がITに期待する役割が変わってくると思っています。だからこそ当社では今後、日本での投資を加速していこうと考えています。
日本企業にアドバイスをしつつ、企業が今の立ち位置から何をしたいのか。私どもは、これを設定してゴールに向かう手伝いをしていきたいと思っています。
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