ちぐはぐでも「目標はメンバーが立てる」 全国制覇多数、女子バスケ名門校を率いる敏腕コーチのマネジメント術:異才を見いだす「育てるマネジメント」(3/3 ページ)
女子バスケットの名門・東京成徳中学校・高等学校で長年指導者を勤めてきた遠香(おか)周平氏。何度もチームを表彰台に送り出し、日本代表チームなどで活躍するプロ選手を育成してきた。メンタル面でもスキル面でも発展途中の選手たちを、どのようにチームとしてまとめ、鼓舞してきたのだろうか? そのマネジメントの極意に迫る。
その目標を、1年後に達成できているイメージがわくか?
遠香氏: 目標を立てるときには、その目標を1年後に達成しているイメージがわくかどうかを大事にしています。
先ほど例にあげた「全国制覇を狙えるのに、ベスト8入賞を目標に掲げてきた」場合なら、まずは「ベスト8を狙えるチームは、どんなチームか」をイメージしてもらいます。そのうえで、今の自分たちに足りないものを考えてもらう。もし、現時点で足りないものがほとんどないのなら、自分たちを過小評価していたことに気付けますよね。
佐藤氏: 目標を軌道修正するヒントを与えて、自分たちで考えるようサポートしているのですね。
遠香氏: 人が立てた目標と、自分たちが立てた目標だと、向き合うモチベーションが全く変わってきます。
私は、目標と理念は「両輪」だと思っていて。理念は、コーチの私からはっきりと示す。その理念を理解したうえで、部員たちで目標を立てる。ただ、いくら理念や自分を理解して目標を立てても、そのために最大限努力しても、「全国制覇」などの相手ありきの目標は達成できないこともよくあります。でも、向き合えば向き合った分だけ、理念は自分の中にちゃんと残るんです。
先ほどお話しした「魚の取り方」と同じで、自分で考えたら考えた分だけ、学校を卒業して私の手が離れた後にどんな環境に行っても、自律して生きていけるようになります。
(後編に続く)
記事の後編「組織に必要な『キャプテン』『リーダー』『フォロワー』――バスケ強豪校を30年率いた名監督の『強いチームの作り方』」(6月10日公開予定)では、具体的にチームメンバーがどのような役割を担うことで、組織として強くなれるのか。チーム作りに欠かせない視点を明らかにする。
この記事を読んだ方へ チームワークはこう作る!
ワークスタイル変革の第一線を走るサイボウズの青野慶久社長が「ITmedia デジタル戦略EXPO 2024 夏」に登壇。
「企業の成長」と「働きやすさ」をどう両立させるのか――多くの企業が、組織と従業員のベストな関係を探している。DXやコロナ禍を経てコミュニケーションの形も働き方もガラリと変わった今、“理想的な職場”を実現するカギとは?
- イベント「ITmedia デジタル戦略EXPO 2024 夏」
- 2024年7月9日(火)〜7月28日(日)
- 無料でご視聴いただけます
- こちらから無料登録してご視聴ください
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「営業はしない」 「さらば青春の光」をヒットさせた敏腕マネジャーの仕事術
お笑いコンビ「さらば青春の光」のマネジャーを務めるヤマネヒロマサ氏。彼はどのようにして「さらば」の2人ひいてはザ・森東を成長させてきたのか。話を聞くと「いわゆる営業はしない」「普段はマネジャーだという意識はあまりない」と、独自の仕事論が明らかに。
組織改革は「前任者の否定」から 中央大陸上部が低迷期→箱根駅伝2位を実現できたワケ
中央大学陸上競技部で駅伝監督を務める藤原正和氏に、組織改革の秘訣をインタビュー。連続で箱根駅伝のシード権を逃すなど、藤原監督の就任前は低迷が続いていた中央大学陸上競技を、どのように変革してきたのか。就任直後のチームの状況や、箱根駅伝準優勝に至るまでの経緯を聞いた。
富士通の27歳エース社員、1年目で花形部署に異例のヘッドハント 信条は「3カ月で成果出す」
新卒1年目で富士通のグループ会社に入社した寺島さん。まさかの1カ月で異動希望を提出し、現在は本社の花形部署で働く。新卒4年目の現在までにどのような経験を積んできたのか、取材した。
20代で「モンスト」開発部長に スピード出世を遂げたMIXIエースの「マネジメント論」
MIXIを代表するゲーム事業『モンスターストライク』は2023年に10周年を迎えた。10年たった今でもその人気ぶりは衰えず、世界累計利用者数が6000万人を超える。そんなモンストを支える開発組織には、29歳という若さで部長に就任したエース社員がいるらしい。
ソニー半導体「27歳営業リーダー」の仕事術 なぜストーリー作りを重視するのか
センサー技術を得意とするソニーセミコンダクタソリューションズは、AIを駆使したエッジAIセンシングプラットフォーム「AITRIOS(アイトリオス)」を展開。その最前線で働く27歳の深山大輔さんに、社内の調整や顧客との交渉を通して最適解を生み出す醍醐味を聞いた。

