水平対向+シンメトリカルAWDをアイデンティティーとして取り戻すスバル:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)
スバルの戦略がずっと分からずにいた。「スバルは一体CAFE規制をどうやってクリアするつもりなのか?」ということだ。しかし水平対向ユニットが、CNFが使えるユニットになっていくことが示されて、筆者の中でようやくいろんなことがつながった。
ストロングハイブリッド投入の意味
さて、ここで一度話は変わって、スバルの長期戦略である。2012年にスバルはサンバーの生産を終了して、軽自動車から撤退した。当時の吉永泰之CEOは、軽自動車はどうしても価格勝負の世界になるとして、伝統あるサンバーの撤退を決めた。つまりスバルはこの時に、スズキやダイハツのように良品廉価で戦うことを止め、高付加価値商品のブランドへと舵(かじ)を切ったのだ。
また吉永CEOは、水平対向エンジンこそがスバルだと考えるのは危険だとの見解も示した。「ポルシェを見よ」と。ポルシェは限られたリヤエンジンモデルにだけ水平対向ユニットを継続しているが、利益をもたらすSUVを中心とした多くのモデルは、エンジンもシャシーもフォルクスワーゲングループのもの。いわば共通のハードウエアを持つ兄弟車だが、ポルシェはその走りをちゃんとポルシェブランドに値する仕立てに仕上げ、それをポルシェの値段で売る。ユーザーもそれをポルシェだとして喜んで買っていると。実は筆者はこの言葉に非常に感銘を受けて、ずっとこの視点でスバルを見てきた。
それが今回大きく変わったのだ。スバルは「マルチパスウェイワークショップ」で、トヨタのTHS2を水平対向ユニットと組み合わせた新しいストロングハイブリッドを発表した。実はほぼ同じ構成のハイブリッドを一時米国で短期間販売していたことがあったが、あくまでも限定プロジェクトであるとして、すでにディスコンになっている。それを今回復活させたともいえる。構成としてはWRXなどに使っていた280馬力用の大型トランスミッションケースを使って、うまいことTHS2を収容したものだ。
スバルはまだ具体的にその性能を発表していないが、これによっておそらくはリッター20キロのラインを超える燃費になると思われる。実はこの「マルチパスウェイワークショップ」の大きなテーマの1つがカーボンニュートラル燃料(CNF)への対応だった。つまりスバルの水平対向ユニットは、CNFが使えるユニットになっていくのだ。
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