午後の紅茶「夏はアイスティー」猛プッシュ 市場拡大で狙うコーヒーの座(2/2 ページ)
キリンビバレッジが、「午後の紅茶」を6年ぶりにリニューアルする。リニューアルするのは定番3商品(ストレートティー、ミルクティー、レモンティー)で、中味、パッケージデザイン、容器を全て刷新。同社の看板商品である午後の紅茶をフルモデルチェンジする背景には、強力なライバルであるコーヒーの存在があった。
実は夏に飲まれない紅茶、なぜ?
午後の紅茶の2023年における販売量は5000万ケースを突破。今年の第1四半期売り上げは前年同期比7.6%増と好調だ。「通年で堅調な売れ行きですが、実は夏場の販売量が伸び悩む傾向があります」(原氏)
一般的に夏期は清涼飲料水が最も売れる時期だが、多くの消費者は炭酸飲料やスポーツドリンクを選ぶ傾向にあるという。その要因として、原氏は「紅茶=ホットのイメージが強く、夏の飲み物として認識されていないからではないか」と分析する。
そこで同社は昨年の夏から、暑い時期の飲み物としてアイスティーを訴求する取り組みを開始。今年の夏は午後の紅茶のリニューアルの他、首都圏各地にアイスティーを提供するキッチンカーを走らせる。また、ホテルや飲食店、夏の行楽地であるプールや海水浴場と協業し、アイスティーを提供する予定だ。
同社が午後の紅茶のプロモーションに力を入れる背景には、コーヒーの存在がある。「飲料市場全体のうち、コーヒーが占める割合は11%ほど。一方の紅茶は4〜5%と大きく離されています。強気な目標ではありますが、コーヒーと同等の市場規模を目指しています」(同社社長 井上一弘氏)
そのためには今回のリニューアルにような商品価値の向上に加え、紅茶を飲むシーンの提案を続けることが必要だと原氏は話す。コーヒーは朝や仕事の合間など、飲むシーンを具体的に思い浮かべることができる一方で、紅茶には「飲むシーンが思い浮かびづらい」という弱みがあるからだ。
さらにペットボトルタイプのコーヒーが台頭したことも、紅茶にとって脅威だという。「コンビニやスーパーの飲料コーナーを見ると、紅茶が棚の隅に追いやられています。数年前に登場したペットボトルタイプのコーヒーが市民権を得たことで、紅茶が弾かれてしまっているのが現状です」(井上社長)
コーヒーチェーンであるスターバックスやタリーズは昨今、紅茶に特化した店舗の展開に力を入れている。また、セブン-イレブンは紅茶を提供するマシンの導入を進めており、同社は紅茶市場には成長余地があると見込む。コーヒーという強力なライバルを前に、リニューアルした午後の紅茶はどこまで健闘できるか。
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