リプトン ミルクティー、わずか1年で「元の味に戻します」 なぜ、異例の判断をしたのか?:667件のご意見(1/3 ページ)
2023年3月、森永乳業は1年前に刷新した「リプトン ミルクティー」を元の味に戻すという異例の判断をした。その背景にはどのような出来事や葛藤があったのか? 森永乳業の担当者に取材した。
「青春時代を共に過ごした、あのミルクティーをもう一度飲みたいです」――森永乳業の元に消費者からのご意見が届いた。悲痛な声は、同社のロングセラー商品「リプトン ミルクティー」の大幅リニューアルに向けられたものだった。
同社は2022年3月にリプトン ミルクティーの販売を終了し、大幅に味を変更した「リプトン ロイヤルミルクティー」をリニューアル商品として発売した。期待を込めたリニューアル、初速の売り上げは前年以上で上々の滑り出しとなった。
しかしその1年後、同社は「元の味に戻す」という異例の意思決定を下した。その裏には、冒頭の声を含む667件の「ファンの意見」があった。
2008年をピークに苦しい時期が続く
リプトン ミルクティーの歴史は1989年にさかのぼる。500ミリリットル入って100円というコスパの良さから学生を中心に人気に火が付いた。学生ドリンクの代名詞として長らく愛されてきたが、森永乳業の宇田川史郎さん(営業本部マーケティング統括部ビバレッジ事業マーケティング部マネージャー)は「2008年をピークに徐々に売り上げが落ちていきました」と当時を振り返る。
近年は少子化の影響で牛乳を除く紙パック全体の市場が縮小しており、リプトン ミルクティーもその影響を強く受けているという。もちろん、タピオカミルクティーブームによって一時的に活気が戻ることはあったものの、その分競合の増加やミルクティーの楽しみ方の変化など消費者のニーズは多様化・分散していった。
そこに追い打ちをかけたのが、20年に始まったコロナ禍だった。通勤・通学や部活動が減少した影響を大きく受けた。しかしコロナ禍のような異常事態には新しいビジネスが日の目を見ることもある。実際、お家時間が増加したことで家でコーヒーや菓子を楽しむ「家カフェ」需要が誕生した。リプトン ミルクティーはそこの需要を獲得できなかったのだろうか。
宇田川さんは「ミルクティーが活躍できる場は、少なかったかもしれないです」とこぼす。「要因としては、リプトン ミルクティーのメインチャネルであるコンビニに行かれる顧客がコロナ禍で減ってしまったのが一つ。もう一つは、家で少し贅沢しようと思った際に、リプトンのような買いやすい価格帯の商品が選ばれにくかったことがあると思います」と分析する。
市場の縮小に加え、メインチャネルの崩壊とまさに「泣きっ面に蜂」の状態が続いた。なんとかこの閉塞感を打破する術(すべ)はないか。落ち込み続ける売り上げと向き合い続けた結果、一気に新しい消費者を取り込むしか手段がないとの結論に落ち着き、味の大幅リニューアルに動き出す。
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