流浪のクルーズトレイン「THE ROYAL EXPRESS」が静岡、浜松へ JR東海に観光列車の幕が上がる:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/8 ページ)
東急の観光列車「THE ROYAL EXPRESS」がJR東海に乗り入れ、2024年11〜12月に横浜〜三島〜沼津〜浜名湖〜静岡〜日本平を巡る。東海道本線を行き来しながら富士山の景色を楽しみ、東海道の歴史と景勝地を訪ねる。これはJR東海、東急、乗客、静岡県にとって、四方良しだ。
2024年に伊豆急行を営業する予定はない
北海道あり、四国ありと、「THE ROYAL EXPRESS」はもはや伊豆の列車ではなく、東急が各地で展開する「クルーズトレイン・ビジネス」になっている。JR東海が観光列車を走らせると聞いたときは意外だったけれど、「東急と共同で」となれば納得だ。
時系列をさかのぼって、2024年2月10日に「THE ROYAL EXPRESS」の公式サイトで「2024年 THE ROYAL EXPRESSの旅」が発表された。その中で11〜12月の「THE ROYAL EXPRESS 伊豆・静岡の旅」が告知され、「詳細が決まり次第お知らせいたします」となっていた。
1〜3月に「 四国・瀬戸内クルーズトレイン」、4〜6月は「THE ROYAL EXPRESS」が定期検査のため「日本の観光列車をつなぐ美しさ、煌めく 旅。」としてブランドだけ冠したコースがあり、8〜9月に「THE ROYAL EXPRESS 北海道クルーズトレイン」がある。
筆者は、「THE ROYAL EXPRESS 伊豆・静岡の旅」が伊豆急行線を含んだコースだと思っていた。しかし実際はJR東海区間を走る旅だった。あらためて「静岡」という文字が入る意味が分かった。今年2月の段階で東急とJR東海の計画は進んでいたわけだ。
そして2024年は、伊豆急行線を営業運行する「THE ROYAL EXPRESS」はない。伊豆急行は車両基地として「THE ROYAL EXPRESS」を送り出し、迎えるだけだ。
伊豆急沿線の観光業界は、これを寂しいと思わないだろうか。そこがちょっと気になるけれど、東急によると、もともと伊豆急行沿線の観光シーズンは、JR東日本の特急「踊り子」が増発されるほか、関東各地からの臨時列車も入ってくるため、「THE ROYAL EXPRESS」を走らせる隙間がなかったという。まるで阪神甲子園球場のグラウンドを高校野球大会に譲る阪神タイガースのように、「THE ROYAL EXPRESS」は遠征するしかなかった。北海道クルーズの背景にはそんな事情もあった。そして東急にとっては、これが観光列車遠征ビジネスのヒントになった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
九州と北海道 2つの高級クルーズ列車は、リピーターを獲得できるのか
高級クルーズトレインの先駆者「ななつ星in九州」と北海道を巡る「THE ROYAL EXPRESS 〜HOKKAIDO CRUISE TRAIN〜」に新コースが設定された。どちらも国内観光需要の盛り上がりに向けた対応だ。しかし定員を減らして三密を避けつつ、運行とサービスを維持するには顧客単価を上げる必要がある。
年末年始、なぜ「のぞみ」を全席指定にするのか 増収より大切な意味
JR東海とJR西日本が、ゴールデンウィーク、お盆休み、年末年始の3大ピーク時に「のぞみ」を全列車指定席にすると発表した。利用者には実質的な値上げだが、JR3社は減収かもしれない。なぜこうなったのか。営業戦略上の意味について考察する。
次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?
西九州新幹線開業、北陸新幹線敦賀延伸の開業時期が近づいている。そこで今回は、新幹線基本計画路線の現在の動きをまとめてみた。新幹線の構想は各県にあるが、計画は「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」として告示されている。これと費用便益比、各地のロビー活動の現状などから、今後を占ってみたい。
相鉄・東急「新横浜線」開通で影響する16路線を読み解く
2023年3月に開業予定の「新横浜線」は、過去最大といえるほど複雑な鉄道運行計画になっており、9社局16路線が関連する。本稿では、東急電鉄と相模鉄道の発表をもとに、各社の思惑などを考察しつつ、最後に2つの提案をしたい。
