退職代行が流行 便利さに潜む3つの「落とし穴」とは?:働き方の見取り図(2/4 ページ)
近年、退職代行サービスへの注目が高まっている。これまであまり指摘されてこなかった退職代行を利用するデメリットについて考えたい。
会社が被る5つのデメリット
それに対し、会社側からすれば、退職代行を利用されることに特段のメリットは見当たらず、デメリットはたくさんあります。大きく5点挙げたいと思います。
(1)引き留めのチャンスを失う
1つは、引き留めのチャンスを失うことです。どれだけ惜しい人材で引き留めたいと思っても、退職代行を利用された時点で社員からは意思疎通を拒絶されたことになります。退職代行事業者が間に入ってしまうと、直接コンタクトをとることは困難です。
(2)社内環境を改善できない
次に、社内環境の改善がしづらくなること。社員からの退職申し出は、会社の改善点を知ることができる貴重な機会でもあります。しかし、退職代行事業者が間に入って直接退職者本人の声を聞くことができなくなると、会社のどこに不満があったのか確認できないまま、粛々と退職手続きを進めざるを得ません。
(3)退職代行が連鎖する恐れ
3つ目は、退職代行の利用が他社員にも連鎖する可能性です。退職意向の社員が職場に出社しなくなっても、社員同士は個別につながりを持っていることもありますし、SNSもあります。「退職代行を利用したらスムーズに辞められた」などといった情報が社員間で共有され、そんな情報を目にする機会が増えるようになれば、退職代行の利用に対する抵抗感は薄まっていきます。
(4)イメージの低下
4つ目は、社内外のイメージ低下です。退職代行を利用して辞めることは、会社と社員の関係が良くない証明と受け取られる面があります。自社に勤めていた社員が退職代行を利用して退職したという情報は、社内外にネガティブな印象を与えることはあっても、ポジティブな印象を与えることはありません。
(5)社員との関係が断絶
最後5つ目は、退職後の関係が途切れることです。採用難が慢性化する中、雇用の切れ目を縁の切れ目とせず、退職後の社員と良好な関係性を継続していくアルムナイ制度を導入する会社が増えています。退職後も取引先としてやりとりしたり、托卵(たくらん)と割り切り新たな経験を積んだ後に再び社員として復帰してもらうなど、ご縁を“つながり資産”として生かすことが出来なくなります。
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