退職代行が流行 便利さに潜む3つの「落とし穴」とは?:働き方の見取り図(3/4 ページ)
近年、退職代行サービスへの注目が高まっている。これまであまり指摘されてこなかった退職代行を利用するデメリットについて考えたい。
利用者が見落としがちな3つのデメリット
このように、退職代行を利用されると会社にとってはデメリットだらけです。では、利用する社員側にはデメリットがないのかと言うとそうでもありません。少なくとも3点あります。
(1)検証できない
1つは、早まってしまった可能性があっても検証できないことです。
例えば、上司の指導が厳し過ぎて耐えられず退職を決意したものの、その厳しさは期待の裏返しで間もなく昇進する予定だったなどということもあるかもしれません。あるいは、嫌だった上司のことを会社側も問題視していて異動させる予定だったり、その上司も近々退職する予定だったなどということもあります。直接退職を申し出ていればそんな話を聞くことができて思いとどまれたかもしれませんが、退職代行を利用すれば会社とコンタクトをとる機会が失われてしまいます。
(2)マイナス評価
次に、退職代行を利用したことへのマイナス評価です。退職代行というサービスをよく思わず、利用した人に厳しい目を向ける人も少なくありません。退職代行を利用したかどうかは、守秘義務や個人情報保護の観点から基本的には外部に漏れることはないのかもしれませんが、少なくとも退職した会社の上層部や人事関係者などには知られることになります。
これから先、それらの人たちとどこかで新たな接点が生まれることが、ないとは言い切れません。
(3)会社との関係が断絶
3点目は、退職後の関係が途切れることです。一度生じた縁が資産になるのは、会社側だけでなく社員側にとっても同じです。アルムナイ制度などを導入する会社が増えていることは、退職する社員にとっても再就職のチャンスが広がるなどのメリットがあります。しかし、退職代行を利用すると、その会社との縁を資産として生かすことは難しくなります。
ただ、ここに挙げた社員側のデメリットは、「この会社とは二度と関わりを持ちたくない」と割り切っている人にとってはデメリットになり得ません。そもそも退職代行を利用している時点で、社員はすでに会社に愛想を尽かしています。
つまり、退職代行は「利用する社員にとってメリットは大きくデメリットは小さい、利用される会社にとってメリットは小さくデメリットは大きい」サービスだと言えます。
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