「PCの生き字引」レノボ・ジャパン社長に聞く 日本市場の特徴と攻略法:需要に変化あり(2/2 ページ)
レノボ・ジャパンの檜山太郎社長は、東芝で世界初のノート型PC「Dynabook」を立ち上げたメンバーの1人で「PCの生き字引」とも言える人物だ。日本市場を攻略するための戦略を聞いた。
電力消費の低下に貢献 低温「はんだ付け」の新技術
日本のPC市場では軽量な製品が求められている。外国市場とのニーズの違いを聞くと「明らかに違います。日本は電車通勤でカバンの中に入れて通勤するので、軽さを意識します。欧米は車移動が多いので、それほど軽さを重視しません」と説明する。ノートPC「ThinkPad」(シンクパッド)などの商品を、今まで使ったことのない人にどうアピールするのか。
「よく言われるのは、キーボードの打感の良さは、他のPCにはない点です。キーボードのボタンはU字カーブといって少しカーブをつけることによって、指が外に逃げないように作っています。持った時の『しっかり感』もあり、言ってみればThinkPad が“体の一部”になり始めるのです」
PCほどさまざまな機能を数値化できる商材はない。顧客がPCを買うときは価格に加え、画面の広さ、ディスク容量、メモリー性能など「スペック」によって比較をする。だが檜山社長は「だからこそ逆に感性に訴えることが重要」だと説く。例えばレノボは販売する前に、顧客に貸し出して使ってもらう施策を実施しようと考えている。
「例えばビールはキレ、コクといった“感性”に訴える商品ですが、ThinkPadも同様に『また使いたい』と感じさせる製品にしたいのです。(PC開発拠点の)大和研究所のメンバーは、こだわりを持って作っています」
この大和研究所は、PCを製造する際に必ず伴う「低温はんだ付け」の新技術も開発した。従来は230〜250度ではんだ付けをするところを180度の低温でできる技術だ。使用する際の温度によって電力消費量に大きな違いが出る。費用も安く作れ、地球環境にも優しい技術だ。檜山社長は「他の業界にも推奨していて、広がりを感じています」と話す。
「生成AI時代になれば、特にクラウドのデータセンターの電力消費がぐっと上がります。デバイス側として何ができるか。それを考えたときに出てきたのが、はんだ付けの温度を下げることでした。この議論が2017年ごろに出てきて、今年の初めから実施しています」
AIについては「創造的な技術である一方、破壊的な技術にもなり得る」と予想する檜山社長。ハードウェアメーカーとして最も注力すべきなのはセキュリティだそうだ。
今後発売する各種デバイスにはAIが標準装備となる流れは避けられない。ただAIを入れるためには、クラウドによるオープンな環境が基本だ。一方、クラウドではなくオンプレミス(自社管理)での環境へのニーズも高まりつつあるという。自分のスケジュールをクラウドにアップされることによって、他の人に見られるような事態は絶対に避けたいからだ。
「その線引きを、いかにして管理、運営していくのか。個人としてのデータの領域と、会社や学校などのデータ領域。表に出てもいい領域の管理をどうするのか。ここがハードを担うメーカーの腕の見せ所になると思います」
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