2015年7月27日以前の記事
検索
インタビュー

2050年、PCがなくなる? レノボ・ジャパン社長に聞く「未来のコンピュータの形」

みずほ銀行が2022年に発表したレポート「2050年の日本産業を考える」では、2050年にPCとスマホの普及率が0%になり、市場からなくなると未来を予測している。「PCの生き字引」とも言えるレノボ・ジャパンの檜山太郎社長は、この予想をどう受け止めるのか。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

【注目】ITmedia デジタル戦略EXPO 2024夏 開催決定!

生成AIでデジタル戦略はこう変わる AI研究者が語る「一歩先の未来」

【開催期間】2024年7月9日(火)〜7月28日(日)

【視聴】無料

【視聴方法】こちらより事前登録

【概要】元・東京大学松尾研究室、今井翔太氏が登壇。
生成AIは人類史上最大級の技術革命である。ただし現状、生成AI技術のあまりの発展の速さは、むしろ企業での活用を妨げている感すらある。AI研究者の視点から語る、生成AI×デジタル戦略の未来とは――。

 レノボ・ジャパンの檜山太郎社長は、東芝で世界初のノート型PC「Dynabook」を立ち上げたメンバーの1人で、日本マイクロソフトでもPC業界に携わってきた。まさに「PCの生き字引」とも言える人物だ。前編に続き、檜山社長にPCの未来や働き方のモットーを聞いた。

 みずほ銀行が2022年に発表したレポート「2050年の日本産業を考える」では、2050年にPCとスマホの普及率が0%になり、市場からなくなると未来を予測している。檜山社長はこの未来をどう受け止めるのか。東芝、日本マイクロソフト、レノボ・ジャパンで要職を歴任してきた社長のポリシーとは。

形が変われど技術は存在し続ける

――2050年にはスマートフォンとPCの普及率が0%になり、スマートグラスやスマートコンタクトが普及していくというレポートがあります。檜山社長は未来をどう見通しますか?

 26年後ですよね。確かにそのような状況は、あり得るのかもしれません。ただしコンピューティングという技術と、ICT(情報通信技術)については、形が変われど存在し続けるでしょう。

 PCを作るときに最も難しいのは、人が触る時のインタフェースをどう作るかです。現在は、テレビのダイヤル式のリモコンを体験した世代、アイコンをクリックしてきた世代、画面をタッチしてきた世代、音声を重視するZ世代と、4つの世代が同時代を生きています。こんな状況は、歴史の中で一度もないように思います。

 当社は今後も、世代の違いを意識しながら製品を投入していきます。ですが、26年後のPCの形はどうなるのか今は分かりません。一つ言えるのはインタフェースがどうなるかによって製品の形が変わるということでしょう。


ThinkPad X1 Carbon Gen 12(レノボ・ジャパン提供)

――檜山社長の座右の銘やリーダーとしてのモットーを教えてもらえますか?

 私が仕事を始めたとき、組織を運営するようになったとき、そして現在の社長という立場のときでは、全く理想のリーダー像が異なります。マイクロソフトにいたときは毎月、副社長に月次や四半期の業績を報告していました。その際に、見込みに関する数字の精度の話になりました。私の報告に対し「もっと上がるはずだ。私の数字と、あなたの出した数字が違う」と言われたのです。2年前の話です。

 副社長の数字はAIが算出したものでした。実はそのさらに2年ほど前から私の数字と、AIの数字とを、どちらが正しいかずっと追っていたのです。結果は、私の数字が7%ほど実数とずれていたのに対し、何とAIは4%以内で収まっていました。それで外部のステークホルダーに報告するときには、AIが出した数値が使われるようになりました。とてもショックでしたが、そのときに経営者に求められるスキルも変わっていくのだと実感しました。

――なるほど。テクノロジーの発展によって経営者に必要な能力も、未来を見通す力から人をマネジメントする力などに変わっていくのかもしれませんね。

 それまでの私は「こういう風にしてください」「なぜ、できていないんですか?」という感じで、上から指示するようなところがありました。部下から「昔は怖かった」と言われるぐらいだったのです。ですが今の私は全く違います。新しく出てきたものをリスペクトするようにしているからです。

 昔は会社の中でも、後輩が先輩の背中を追いかけるような文化もありました。その意味では、いいリーダーの基準が明確にあったのかもしれません。ですが、これからはなくなっていくと思います。

 では今後、どんなリーダーシップのスタイルを取る人がいいのか。これは時代の変化に合わせて、自分自身をフレキシブルに変えていける人だと思っています。大切なのは、その時に有している技術や社員の資質を、最大限に生かすことではないでしょうか。

 ですから私は座右の銘はあえて持っていません。観察力を強くするようにして、先々にどんなものが求められるか、自分の物差しで考えをまとめ、そこに対して準備をする姿勢でいます。

変化に対する「対応力DNA」を残せるか

 以上が檜山社長へのインタビュー内容だ。IT業界では、技術革新によってビジネスモデルもトレンドも目まぐるしく変わる。檜山社長は業界の最前線で、その変化を目の当たりにしてきた。

 「座右の銘を持たない」ことは、その裏返しとして、変化への対応力が優れていることを意味する。みずほ銀行のレポートが指摘するように、仮にPCやスマホが本当にこの世からなくなったとしても、その時までに新しいビジネスモデルを構築していることが重要なのだ。それこそがテクノロジー業界で生き残るカギとなる。

 檜山社長は経営者として、今後のレノボにどれだけの変化に対する「対応力DNA」を残せるのか。

この記事を読んだ方へ 生成AI×ビジネスを見据える

 元・東京大学松尾研究室のAI研究者、今井翔太氏が「ITmedia デジタル戦略EXPO 2024 夏」に登壇。

 生成AIは人類史上最大級の技術革命である。ただし現状、生成AI技術のあまりの発展の速さは、むしろ企業での活用を妨げている感すらある。AI研究者の視点から語る、生成AI×デジタル戦略の未来とは――。

photo

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る