街中でEV車はそれほど見かけないのに、なぜ「使われない充電器」がたくさんあるのか:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
EV充電器のインフラ整備ビジネスが盛り上がっているが、実際の稼働率はどうなのか。事業者や東京都、経産省の担当者に聞いてみたところ……。
EV普及促進の裏にある日本のシビアな現実
「EVを普及させていくためにはしょうがない出費だ」と思う人も多いだろう。もちろん、インフラ整備というものは、まず張り巡らせなくてはいけない部分があるのは事実だ。ただ、補助金で賄えるからといって、毎年約59万人の人口が消えていくこの国で「産めよ、殖せよ」というノリでインフラを急拡大していくわけにもいかない。
そんな日本のシビアな現実がうかがえるようなニュースがちょっと前にあった。
東京駅から総武線快速で約90分の場所に、千葉県山武市というところがある。九十久里浜に面した自然の豊かな場所だが、EVシフトという世界的な潮流を早々にとらえて、補助金を使って2014年10月に市役所などに急速充電器を4基設置していた。しかし、それが2024年5月に運用が停止され、撤去されることとなったのである。
理由はシンプルに「使われない」からだ。
山武市によれば、これらの急速充電器は2014年から2024年までで415回しか使われず、この10年間で約2200万円の赤字が出たという。
実はこのように「補助金が出る」ことから軽い気持ちでサクっと設置したものの、いざ運用してみると「使われない充電スポット」になってしまうリスクがあるのだ。この背景について、充電器設置事業関係者はこのように語る。
「稼働率が低い理由はさまざまな要素があります。まず拠点のニーズに見合った導入計画ではなかったことが挙げられます。このほかには、アプリの使い勝手も大切ですし、ローミング(利用者が契約している事業者とは異なる充電設備でもサービスを利用できる機能)などの利用促進施策があるかも重要ですし、やはり料金も大きいです。定額プランなど、柔軟な料金体系を導入している充電設備会社の充電器は、稼働率が高いですね」
このような「使われない充電スポット」問題は各事業者の頭を悩ませていて、それは「完全無料」をうたって急速に充電インフラを広げているテラチャージにも当てはまる。
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