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なぜマネーフォワードは“祖業”を新会社に移したのか 決断の背景に「収益化」「ポイント経済圏」定点観測(2/5 ページ)

マネーフォワードと三井住友カードが資本業務提携を発表した。マネフォは創業以来の事業「マネーフォワードME」を大きく転換するわけだが、なぜこの決断を下したのか。

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PFMサービスの栄光と苦悩

 マネーフォワードMEは、日本のPFMサービス市場において、圧倒的な存在感を示す先駆者だ。2012年の創業以来、着実に利用者を増やし、現在では1610万人もの個人が利用する国内最大級のサービスへと成長を遂げた。

 その人気の秘密は、複数の金融機関の口座やクレジットカードの利用履歴を一元管理し、家計の全体像を「見える化」する便利さにある。スマートフォンひとつで、自身の資産状況を簡単に把握できるこのサービスは、デジタル時代の家計簿として多くのユーザーから支持を集めてきた。

 しかし、その成長の陰で、大きな課題も抱えている。PFMサービスの収益化という難題だ。

 「何らかお金に対する不安を持っている」ユーザーが88.4%にも上るという調査結果が示すように、個人の金融リテラシー向上や資産管理の重要性は広く認識されている。しかし、その需要の高さは必ずしも事業としての収益性に直結していない。


祖業であるマネーフォワードMEだが、マネーフォワードの基幹事業は今や会計などのバックオフィスSaaSだ

 マネーフォワードの事業ポートフォリオを見ると、PFMサービスを含むHome事業の売上高は全体の約13%にとどまる。さらに、前年比16%増という成長率は、会社の基幹事業であるバックオフィス向けSaaSの45%増に比べると見劣りする。つまり、ユーザー数では圧倒的な存在感を示すPFMサービスだが、収益面では期待通りの成果を上げられていない現状が浮き彫りになっている。

 この課題に対し、マネーフォワードはさまざまな施策を講じてきた。プレミアム会員向けの有料サービスの提供、金融商品の比較・紹介サービス、さらには保険、FP/IFA相談、資産運用、新電力など、他社との協業を積極的に推進。ユーザーの「お金の課題解決」を目指し、9000億円以上のTAM(最大市場規模)を持つ事業領域で、さまざまなサービス開発と提携を進めてきた。


PFMサービスの現状の事業モデルは、さまざまな金融サービスに顧客を紹介する広告モデル。ユーザーに金融課題の解決方法を提示することを狙う

 しかし、こうした取り組みにもかかわらず、1610万人という圧倒的なユーザー基盤に見合う収益を上げるには至っていなかった。多くのPFMサービスが直面する「基本機能の無料提供」と「収益化」のジレンマは、マネーフォワードにとっても大きな課題であり続けた。

 この課題に対し、マネーフォワードが出した答えが、三井住友カードとの資本業務提携だったわけだ。

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