「トヨタが日本を見捨てたら、日本人はもっと貧しくなる」説は本当か:スピン経済の歩き方(5/7 ページ)
トヨタ自動車の豊田章男会長が囲み取材で発した心情が話題になっている。中には「トヨタが日本を見捨てたら日本人はもっと貧しくなる」といった論調もあるが、果たして本当なのだろうか。
日本経済の「失敗の本質」
ただ、こういう教育の効果は絶大で「三つ子の魂百まで」ではないが、日本人の多くは大人になってからも「日本経済をけん引しているのは大企業、だからとにかく大企業を応援しなくては」という「大企業中心主義」ともいう経済観に支配されている。
これが日本経済の「失敗の本質」である。
先ほどから繰り返しているように、日本の貧しさの元凶は、サービス業の小さな会社で働く日本人が常軌を逸した低賃金だからだ。
なので、日本経済復活のためには全国民の7割が働く350万社の小さな会社の賃上げをしなくてはいけない。ただ、これが難しい。小さな会社は常に資金繰りに困っていることに加えて、事業資金とオーナ経営者のサイフが同じであることが多い。つまり、政府が税金を用いて、小さな会社に「賃上げをしてね」と補助金をバラまいたところで、運転資金にまわされるか、経営者の懐に入るだけで、末端の労働者に還元されない。
そうなると残された道は、最低賃金の引き上げしかない。経営者にピンハネをされないように、日本全国あらゆる産業が平等に賃金のボトムアップをしていくことで、賃上げの好循環を生み出すのである。実際、先進国の多くはこのような手法をとっている。
しかし、大企業中心主義の日本ではそういう発想にはならない。「春闘」でトヨタやらの大企業が賃上げをしていけば、トリクルダウンで日本全体に賃上げの波が広がっていく、という「風が吹けば桶屋がもうかる」的な経済政策を何十年も続けてきた。
ただ、結果はご存じの通りだ。毎年、アナリストの皆さんが「今年の春闘の賃上げの影響は夏くらいから見えてくるでしょう」と予想するも、日本人の7割は低賃金のままということが延々と繰り返されている。大企業の好業績や賃上げと、庶民の貧しさのギャップがどんどん開いているのだ。
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