成田空港と都心を結ぶ新構想 「押上〜泉岳寺短絡線」はどうなる?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/5 ページ)
成田空港の航空機の年間発着回数は、2024年度が25万回で、2040年代後半には50万回に達するという。旅客ターミナル容量は、現在年5700万人だが、年50万回発着時は7500万人になる。増強に対し、発着回数は滑走路の延伸と新設を進め、ターミナル容量については「ワンターミナル構想」が浮上した。
成田国際空港の年間発着回数が足りない。
成田国際空港(以下、NAA)は、B滑走路の延伸とC滑走路の新設を進めている。供用開始は2028年度末となっていて、それまでは滑走路の夜間飛行制限を1時間延長して、増加する発着需要をなんとかしのいでいる状況だ。
国の有識者会議「首都圏空港機能強化技術検討小委員会」は、2013年から2014年にかけて議論を重ねた結果、「B滑走路の延長」「滑走路の創設」が有効と取りまとめた。
国とNAAが2016年に提示した成田国際空港の需要予測によると、2020年代に航空機発着回数は年間30万回を超え、2040年代後半までに年間50万回に達する。ただし、コロナ禍の影響で2024年度の発着回数は25.1万回となっている。やっとコロナ禍前に戻ったといえる。
しかし、円安などで訪日観光客が増加しており、景気回復によって国内からの海外旅行需要の回復も見込まれている。成田国際空港は国際線以外に国内線LCCや貨物機の発着もあるため、航空機の発着回数は増加する材料しかない。成田国際空港の現在の最大発着容量は年間30万回となっており、そろそろ限界に近づきつつある。というより、すでに人気の高い時間帯はこれ以上の発着を受け入れられない状況だ。そこで、B滑走路の延伸と新滑走路の新設、管制技術などの工夫によって、成田国際空港の発着回数を50万回へ引き上げる。
発着回数が増えれば旅客も増える。現在のエプロン(駐機場)の取り扱い能力は34万回発着まで。50万回発着には容量が足りない。旅客ターミナルの容量は年間5700万人だ。発着回数50万回の場合は7500万人の規模となる。足りない。
そこでNAAは2022年9月、国土交通省、千葉県、空港周辺9市町による四者意見交換会で「ワンターミナル構想」に触れた。現在の第1ターミナル、第2ターミナル、第3ターミナルを統合し、1つのターミナルビルにする。貨物ターミナルもB滑走路南側に移し、新設される新滑走路に近づけて、建設中の圏央道に接する。
新しいターミナルビルの位置は現在の第2ターミナルの南側となる。ここはかつて横風用滑走路を予定していたが、一部区画が空港反対派の所有地であり、飛行コースの騒音問題が発生するなどの理由で誘導路に転用されていた場所だ。実際には航空機の性能や地上設備の技術向上によって横風による影響は少なかった。
ワンターミナルの中心から4方向にピア(桟橋)を延ばす。各ピアの両側にスポット(駐機スペース)を置く。このうち2本は現在の第1ターミナルの場所にある。第2、第3ターミナルの跡地はオープンスポットとし、将来のサブターミナル、またはピアの延長も検討するという。
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