成田空港と都心を結ぶ新構想 「押上〜泉岳寺短絡線」はどうなる?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)
成田空港の航空機の年間発着回数は、2024年度が25万回で、2040年代後半には50万回に達するという。旅客ターミナル容量は、現在年5700万人だが、年50万回発着時は7500万人になる。増強に対し、発着回数は滑走路の延伸と新設を進め、ターミナル容量については「ワンターミナル構想」が浮上した。
成田空港アクセス鉄道も新駅に
さて、ここでやっと鉄道の話になる。
この計画によれば、現在の成田空港駅、空港第2ビル駅からターミナルビルがなくなる。東成田駅は北貨物地区や成田空港警察署、国土交通省関連施設の最寄り駅として機能しそうだけれど、北貨物地区の機能は新貨物地区に統合されるかもしれない。その他の場所も新旅客ターミナルから離れてしまうため、移転する可能性もある。この場合は東成田駅も成り立たない。
NAAが2024年7月に発表した「『新しい成田空港』構想とりまとめ 2.0」によると、ワンターミナルに隣接した新駅設置が望ましいという。ただし新駅は、ワンターミナルに隣接する別棟とし、地下に新駅、地上にバス、タクシーなどのカーブサイド(自動車停車場)を設置する。いわば交通結節点だけのビルで、商業・余暇施設も併設する。ターミナルと反対側にビルをつくり、駐車場・事務・ホテル、空港関連施設従業員用の施設とする。
この新駅は、現在の空港第2ビルから分岐する。現在の成田空港駅は閉鎖する。ワンターミナルは段階的に整備するため、第2ターミナル、第3ターミナルもしばらく併用する。空港第2ビル駅はしばらく残ることになりそうだ。
コロナ禍前の2018年の時点で、成田国際空港のアクセス手段ごとの比率は鉄道が約46%、バスが約35%、乗用車が約13%、タクシーなどが約6%となっていた。コロナ禍で鉄道もバスも大幅に減便したけれども、鉄道は2022年10月までにコロナ禍以前のレベルに復帰した。しかしバスは、コロナ禍前は1700便以上あったが、現在は667便にとどまっている。訪日客が利用する都心便は回復しつつあるけれども、国内からの渡航客が多い郊外便の回復が進まない。バス運転手の不足も影響していると思われる。
そうなれば、ますます鉄道の利用者が増えることになる。NAAの調査によると、京成スカイライナーはコロナ禍以前より1便増えているにもかかわらず、2024年3月時点で混雑しており、11日間で72便が満席だった。JR東日本の成田エクスプレスも夕方ピーク時間帯の一部列車で混雑率80%を上回っているという。
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