成田空港と都心を結ぶ新構想 「押上〜泉岳寺短絡線」はどうなる?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)
成田空港の航空機の年間発着回数は、2024年度が25万回で、2040年代後半には50万回に達するという。旅客ターミナル容量は、現在年5700万人だが、年50万回発着時は7500万人になる。増強に対し、発着回数は滑走路の延伸と新設を進め、ターミナル容量については「ワンターミナル構想」が浮上した。
成田アクセス鉄道を複線化したい
この時までにあわせて対策すべき鉄道の問題に「単線区間の解消」がある。現在、成田国際空港は京成電鉄の成田スカイアクセス線とJR成田線の支線が乗り入れている。それぞれ単線となるため、これ以上の増発はできない。年間5700万人のターミナル利用者が7500万人になるとなれば、鉄道、バス、タクシーなどのアクセス手段も増やさなくてはいけない。
コロナ禍前の2019年に国土交通省鉄道局が需要を予測したところ、2030年までにスカイライナー、成田エクスプレスともに一部の時間帯で満席状態になり、2030年代半ばには需要超過による乗り越しが発生する。乗車率100%超えという記述もあるけれど、全車指定席を維持すると100%を超えられないので、各駅停車や快速、アクセス特急など特別料金不要の列車が混むことになる。
すでに成田空港駅、空港第2ビル駅ともにコンコースの混雑が発生しがちであり、その理由はコンコースやプラットホームなど設備が手狭であること、乗客の手荷物が大きいこと、運行本数が少ないこと、ジャパンレールバスの引き換えで列ができることなどだ。この混雑は列車の遅れにも影響するが、これらはワンターミナル駅では広い空間として解決できるだろう。ただし、駅を改善しても増発は難しい。成田空港鉄道が単線だからだ。
成田国際空港に至る鉄道は、複線の線路になっているけれども、実態は京成電鉄とJR東日本が1本ずつ使っている。つまり単線が2つ並んでいる。それぞれすれ違い用の信号場を1つずつ持っており、なんとか運行本数を増やしているけれども、これ以上は列車を増やせない。関西空港に乗り入れている鉄道は、JR西日本と南海電鉄が相互直通の形を取っており、どこでもすれ違いが可能になっている。しかし成田国際空港の線路はJR東日本が在来線の軌間、京成電鉄は新幹線と同じ軌間になっている。相互直通してすれ違い、というわけにはいかない。
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