2028年、街から書店が消える? “救世主”になるかもしれない「2つ」のビジネスモデル(5/6 ページ)
書店業界が深刻な危機に直面している。全国の自治体の4分の1以上で書店がゼロとなり、2028年には街から書店が消えるという予測さえある。そんな中、新たな書店モデルが登場した。
「ほんまる」を通じて、書店の独立開業支援も視野に
再販制度との整合性など法的リスクを事前に排除したことで、企業の参加が実現した。企業側にとっても専用の棚を持つことは自社を深く知ってもらう機会や広告的な価値があり、参加が多いという。「ほんまる」には、地方自治体やデベロッパー、鉄道会社などから出店オファーがあるそうだ。
一方で、課題も挙げられる。デジタルに不慣れな高齢層へのサポートや、棚の位置による人気の偏りへの対策だ。特に足元の棚の人気が低く、価格設定の見直しなども検討している。
日本出版インフラセンターのデータによると、書店数は2003年の2万880店から2023年には1万918店まで減少している。この現象について、今村氏は「多すぎた店舗数が適正値に戻っているだけかもしれない」と、1990年代の書店バブル期に急増した書店数が調整過程にあるのではないかと分析する。
しかし、このままでは適正値すら割り込みかねないと危機感を抱き、今村氏は「個々の書店の生き残り策ではなく、業界全体での秩序ある撤退と再編がカギになる」と語る。業界全体で協力し、計画的に対応していく必要性が高まっているという考えだ。
今村氏は「ほんまる」を通じて、書店の新たな可能性を模索するだけでなく、独立系書店の支援も視野に入れている。「将来、独立開業を目指す人々への支援も行いたい」と語り、書店業界全体の活性化を目指す。具体的には「ほんまる」での経験を生かした経営ノウハウの提供や、融資支援などを計画している。
「ほんまる」は、書店という場の可能性を広げるだけでなく、既存産業の再構築という点で、出版業界全体の未来を考える契機となる事例と言える。
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