なぜ“人型ロボット”を採用? 鉄道保守の人手不足、JR西日本の打開策を聞く(2/2 ページ)
JR西日本は7月から、鉄道設備のメンテナンスに「人型ロボット」を搭載した重機を導入した。国内のインフラ整備における同様のロボットの導入は同社が初だというが、なぜ新たにこのような重機を採用したのか。
そこで3社は、操縦者が単にロボットを操作するだけでなく、「実際のロボットの動きが、操縦者にも伝わってくる仕様」を採用。操縦かんに操縦者が力を加えると、加えられた力の量と方向をセンサーが検知することで、ロボットの腕が動く。さらに、動いた量が今度は操縦かんに反映されるという技術により、「自分が動かしていること」を実感しながら作業ができるようにした。
また、操縦者は操縦時にヘッドマウントディスプレイ(VRゴーグル)を装着する。操縦者が首を動かすとロボットの頭部もそれに伴って動くため、頭部に設置されたカメラからの映像がそのまま操縦者の視界に入るようになっているのだ。こうした仕様により、「直観的な操作感」を実現させたという。さらに「多機能」という名の通り、塗装や切断、ねじ締めのように用途別にツールを付け替えられるようにすることで、将来的に多様な作業に対応できるようにした。
「人型ロボット」というキャッチーな形を採用したことに関しては、梅田氏は「当初は全く目指していませんでした」と話す。「腕が1つだとやれることに限りがあるが、多すぎても重量の問題があるため、2本に落ち着いた。カメラについても、視界が妨げられない位置を考えた結果、人間でいう頭部の位置に持っていかざるを得なくなった。機能やコストを考えて、結果的に人型になりました」
ベテラン作業員からも好評
現時点では多機能鉄道重機を操作する上での公的資格はなく、社内で一定の教育を受けた人が操縦にあたっている。
導入してすでに1カ月経つが、梅田氏によると現場からの評判も悪くないという。体力面で今まで通りの作業が困難になってきたベテランの作業員からは、「このロボットを動かせば、今までの知見を生かして働ける」と好評なようだ。
JR西日本は、今後も作業の幅を広げられるよう、さらなるツールの開発などに取り組んでいきたい考えだ。「トンネル内や高所における設備点検、清掃、部品の取り換えなど、活用シーンをさらに広げていきたいと考えています。現時点では1台導入しているだけですが、使っていく中で課題をきちんと把握して、その知見を生かして量産にもつなげていけたら」(梅田氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
欧米の製造現場でヒューマノイドロボット導入の動き 「人型」にこだわる本当の理由とは
配膳ロボットにヒューマノイドロボット。AI企業がロボット産業に挑む理由とは?
スマホ注文は導入したのに、サイゼはなぜ「配膳ロボット」を導入しないのか
人手不足に悩むファミレス各社でさまざまな取り組みが進む。その中から、今回は“三種の神器”でDXを進めるすかいらーくHDと、注文方式の変更で話題になったサイゼリヤに焦点を当てていく。
1時間で150杯! 駅のそば屋がロボットを導入したワケ
JR東日本スタートアップなどは、駅そばロボットを「そばいちペリエ海浜幕張店」に導入した。その狙いは何なのだろうか。


