謎の百貨店「ボンベルタ」が、イオンリテールの新業態「そよら」に遺したものとは?:後編(2/3 ページ)
2024年2月に姿を消した、イオングループが手掛けた百貨店ボンベルタ。ボンベルタに代わって各地に開業を進める新業態「そよら」の行方は――。
百貨店要素を取り込んだ「そよら」
イオンリテールは2020年3月に大阪市福島区に都市型小商圏ショッピングセンター1号店「そよら海老江」を開業。同社の業態としては珍しい、一般公募による「そら、寄って、楽しんでって!」という呼びかけ由来の施設名を冠し、「通う」「集う」「つながる場」をキーワードとして訴求。今年8月現在は東名阪三大都市圏を中心に13店舗を展開する。
ボンベルタを業態転換した「そよら成田ニュータウン」では、同月中に開業した「そよら福井開発」(5264平方メートル)と比べ約7倍(3万5730平方メートル)という店舗面積を生かし、従来のマルエツに代わる大型食品スーパー「イオンスタイル」を核に、ワールドの「NEXTDOOR」やオンワードの「Onward Green Store」といったボンベルタ最盛期の主力百貨店アパレルを購入可能な大型アウトレット、成田初となる「TSUTAYA BOOKSTORE」「GiGO」とったファミリー層を取り込める話題性の高い専門店を新たに導入した。
オンワードHDが2020年9月に立ち上げた「環境貢献型オフプライスストア」新業態。「23区」「自由区」「J.プレス」「any FAM」といった同社看板ブランドを中心にアウトレット価格で展開する(撮影:淡川雄太)
加えて、1階正面玄関付近に化粧品フロアを2018年秋以来約6年ぶりに移設、銘菓を39ブランドに拡充。3階には「nishikawa」「UCHINO Bath & Relaxation」といった生活雑貨、4階にはボンベルタの屋号を引き継ぐ高級婦人衣料フロア「ボンベルタストリート」を展開するなど、従来の高齢層を意識したブランドを続投している。そよらのコンセプト「日常生活で一番便利な生活拠点」「お子さまを連れて一番快適に過ごせる身近な施設」を基盤にしつつ、ボンベルタの高質路線を深耕する施設となった。
そよら成田ニュータウンが、小商圏型と異なる広域商圏型といえる専門店を多数導入した背景として、宇治知英・イオンリテール執行役員南関東カンパニー支社長によると「ボンベルタ時代にお客さまから支持されたところは基本残す」といったリーシングを志向したことが根底にあるという。
そよらは前提として小商圏型、具体的には半径2キロ圏内の足元商圏に特化したデイリーユースの施設であるが、非常に好調な既存施設の実績を交渉の材料に「百貨店販路の商品をグループを生かして存続」「カウンセリング化粧品など百貨店でしか取り扱えないブランドを社内で協議」することで、百貨店アパレル系アウトレットの新規導入、百貨店業態以外に店舗展開しないブランドの存続が実現した。
ボンベルタの屋号を引き継いだ「ボンベルタストリート」。「AVENUE」「Selection Sensounico」「Cour Carre an」といった百貨店常連6ブランドが立ち並ぶ(撮影:淡川雄太)
イオンスタイルでも従来比約1.4倍の売り場面積を生かし、全国の銘店をそろえた冷凍食品や対面方式の水産・総菜売り場を導入。ボンベルタ開業以来からのベーカリー「ドンク」といった専門店とのトータルコーディネートを意識した売り場づくりを図ることで、フロアによっては従来以上に百貨店要素を強めることとなった。
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