「優秀だが転職回数が多い」「業界未経験」人材を見極める“4つの質問”(3/3 ページ)
ミドル層の採用で「優秀で申し分ないけれど、転職回数が多いのがネックだな……」といった事態はしばしば起きます。こうしたとき、どのようなポイントを踏まえて考えるべきなのでしょうか。転職などにまつわるデータも用いてミドル層の特徴、またそれを踏まえた採用面接のポイントを解説します。
面接のポイント:「STARモデル」を活用し、個人の行動特性や思考特性を引き出す
ご紹介したミドル層の2つの特徴を踏まえ、面接時のポイントとして「STARモデル」を紹介したいと思います。
「Situation」(状況)、「Task」(課題)、「Action」(行動)、「Result」(結果)の4つの観点から過去の特定の状況下で、どのような課題に取り組み、どのような行動を取り、どのような結果が得られたのかを聴き出すことで、個人の行動特性や思考特性を把握する面接手法です。行動面接とも呼ばれています。
本手法に沿ってコミュニケーションを取っていけば、どのようなキャリア観を持ったミドル層でも、自己開示が苦手なミドル層でも、ストーリーテリングがしやすくなるでしょう。企業はそのストーリーの中から、求める、もしくは近しいスキルや経験を見極めることができます。
ミドル層採用の面接は、迎え入れる現場部門が担うケースが多いため、スキルジャッジがメインになってしまいがちです。面接に携わる現場、そして企業人事や採用担当者も含め、これまでの面接を振り返り、アップデートする意味合いも込め、「STARモデル」を活用いただけたらと思います。
最後に:「アンラーニング力」と「キャリアオーナーシップの発揮」を見極めることも重要
「職務経歴書上だけで判断しすぎない」という点に立ち返り、面接で見極めるべきポイントをもう2つお伝えし、本稿を締めたいと思います。
(1)アンラーニング力
アンラーニングとは「学習放棄」とも呼ばれ、これまで得た知識やスキル、さらには自らの価値観を見直し、取捨選択し、代わりに新しいものを取り込むことを指します。
人は、年齢や経験を重ねるにつれ、仕事の進め方や考え方が凝り固まっていく傾向にあります。しかし、即戦力として迎え入れられ、事業貢献が求められるミドル層に関しては特に、転職先の企業のミッションやバリュー、カルチャー、プロダクトやサービスにおける新たなインプットなくして、自らの経験や経験を最大限に生かすことはできません。
よって面接を通じ、未知のことにもオープンなタイプか、年齢や役職に関係なく周囲から学び、新しいことを吸収する姿勢の持ち主かを見極めることが重要です。
また、特定の専門性など発揮してほしいスキルがあればあるほど、受け入れ時の期待が高まっていく一方で、その期待が環境適応における足かせとなり、想定していた活躍につながらないケースが、ミドル層採用において散見されるのも現実です。異分野に挑戦する人ほどアンラーニングしやすい柔軟なマインドセットを持っていることを踏まえた上で、環境適応力を適切に判断することが重要といえます。
(2)キャリアオーナーシップの発揮
自らのキャリアを自分の力で切り開いていく主体性、すなわち「キャリアオーナーシップ」を発揮できるかは、事業にインパクトをもたらすことが求められるミドル層には特に重要です。
パーソル総合研究所の「従業員のキャリア自律に関する定量調査」(参考リンク:PDF)によると、キャリア自律度、すなわち「キャリアオーナーシップ」が高い人ほど、自己評価やワーク・エンゲージメント、学習意欲、仕事充実感が高く、人生満足度も高いことが分かっています。
自らの働き方を考え、自分の意思で決め、その自己決定に基づいて行動することができるタイプか。これまでのキャリアの描き方や、自身のキャリアに対する向き合い方などを、面接を通じ掘り下げることも非常に重要といえるでしょう。
著者プロフィール
山口 義之(やまぐち よしゆき)
2005年、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)に入社。法人営業として、不動産や建設、教育、金融、製造業、ITなど多岐にわたる領域の採用支援に携わる。2014年に中部支社、2016年に地方拠点(札幌/仙台/広島/福岡)、その後首都圏の営業責任者を歴任。2020年1月、パーソルキャリア株式会社を退職し、SaaS系スタートアップ企業にて執行役員を務めたのち、2021年9月に復職。2022年4月よりハイクラス層向け転職支援事業の責任者を務め、2023年4月、doda副編集長に就任。2024年4月からは、大手法人向けの採用支援組織も兼務。ハイクラス層の転職動向に精通している。
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