システム導入で起きる“深刻な部門対立”どう解決? あの部署の効率化で、こっちの部署から不満噴出:ファイナンス組織「3つのジレンマ」とデジタル活用(2/3 ページ)
システム導入の際、現場では部門間の対立が起きてしまいやすい。利害対立を越えて、プロジェクトを推進していくためには何が必要なのだろうか。
プロセスオーナーの3つの役割
プロセスオーナーには大きく3つの役割が存在する。これらの役割を正しく認識した上で、プロセスオーナーを基軸にした業務変革を進めることが、スムーズな基幹システムの刷新、さらにはレジリエントな(回復力のある)オペレーティングモデルの構築につながる。
まず、1つ目の役割は各エンドツーエンドプロセスにおける、重点KPIとサービスレベルの定義である。ここでいうエンドツーエンドプロセスとは、(図2)に記載したような、業務プロセスの川上から川下まで、機能部門を横断した業務プロセスを指す。
この中で例えばAR to Cashのプロセスを再構築する際、機能部門の要望は「入金消込の自動マッチング率は現在80%なので、これを90%程度にしてほしい」といったものかもしれない。
しかしながらAR to Cashにおいて重視すべきKPIが滞留債権回収率だった場合、機能部門の声に引っ張られると本来最も重要なサービス品質への対応が後回しになる危険性がある。あるいは、そもそも機能部門のオペレーターの要求は過剰品質であることも考えられる。
プロセスオーナーは、個別部門の要求に振り回されることなく、エンドツーエンドプロセス全体での重点KPIと必要なサービス品質レベルを定義し、合意形成する必要がある。なお、この場合の合意先は事業管理者や経営層など、当該エンドツーエンドプロセスのサービス受益者となる。
次に2つ目の役割は、サービス受益者と合意された重点KPIおよびサービスレベルを実現するために、部門横断の俯瞰的な視点から業務プロセスを再設計することである。
業務プロセスの再設計に当たっては部門間の利害が衝突、あるいは、特定部門が抵抗勢力となるケースも考えられる。従ってプロセスオーナーには高い調整能力と説得力、そして合意形成能力が求められる。
最後に3つ目の役割は、各機能部門の掌握とモニタリングである。
プロセスオーナー主導で各部門と合意形成しながら再設計した業務プロセスも、それを遂行する各部門のスキルや人材がなければ成立しない。従って、各機能部門が遂行能力を担保できるよう働きかける必要がある。
また、実際に稼働した新業務プロセスが、サービス受益者と合意したサービス品質の目標値に達しているか、常にモニタリングを行い、必要に応じて改善策を講じる責任がある。
これら3つの役割を図示すると、図3のようになる。なおここで留意すべきは、これらの3つの役割は一過性のものではないということだ。絶え間なく変化する経営環境に応じて、重点KPIと必要サービス品質を見直し、それに伴う業務プロセスの修正を行い、修正プロセスに必要となるケイパビリティを機能部門に確保させ、実行状況をモニタリングするというサイクルを断続的に回していかなければならない。
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