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SNSにまん延する偽情報 プラットフォーマーに求められる対策とは?(1/2 ページ)

SNSにあふれる偽情報。投稿を適切に管理するコンテンツモデレーションの最適解はあるのか。専門家は事業者による情報公開の重要性を指摘する。

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 SNSなどにまん延する偽情報や偽広告への対応が急務となっている。デジタル空間における情報流通の健全化について議論してきた総務省の有識者会議は9月10日、議論のとりまとめを公表。SNS各プラットフォーム(PF)事業者らが取る対策について、一定程度の取り組みは認められるものの、「透明性・アカウンタビリティー(説明責任)の確保は総じて不十分」「事業者による自主的な取り組みのみには期待できない状況」などと厳しく指摘した。

 各PF事業者は、うその情報や広告が拡散しないよう、AI技術や人間の目で監視し、不適切な投稿を削除する「コンテンツモデレーション」(投稿の適正管理)に取り組んでいるが、瞬時に拡散する偽情報に対処しきれていないのが実情だ。

 偽情報の拡散について研究する東京大学大学院工学系研究科の鳥海不二夫教授は、「研究者など第三者の目によって(PF事業者の取り組みを)監視できる環境が整っていることが重要だ」と指摘する。


PF事業者は偽情報に対処しきれていないのが実情だ。写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

TikTok、“覆面調査”で偽広告を全て承認

 2024年5月、世界の人権侵害などを監視する国際NGO「グローバル・ウィットネス」が、TikTok、YouTube、X(旧Twitter)を対象に、ある“覆面調査”を実施した。それは、欧州連合(EU)で実施される選挙に関連した偽の広告配信を意図的に依頼し、各PF事業者の対応を探る――というもの。

 例えば「伝染病の急増を受けて、選挙管理委員会は全ての投票所を閉鎖します。代わりにオンラインで投票してください」「新しい規則により、有効な運転免許証を持っていない場合、選挙日に投票することはできません」といった内容で、同NGOはこうしたテキストの動画広告を16本用意し、各PF事業者に配信を依頼した。


グローバル・ウィットネスが“覆面調査”で用意した偽の広告(グローバル・ウィットネスの調査結果より)

 この結果、TikTokは16本の動画全ての配信を承認。YouTubeは16本のうち2本を承認し、Xは「ポリシー違反」として全ての広告を承認しなかった。なお、偽の広告は公開されないよう、審査後に同NGOが撤回したという。

 調査報告を受けたTikTokは同NGOに対し「モデレーターの人為的ミスにより承認された。今後、同種のミスが発生しないよう新たなモデレートの仕組みを導入した」などと説明している。

データ公開に後ろ向きなPF事業者も

 各PF事業者の透明性や、取り組みの有効性を検証する手段として、PF事業者が公開したデータをもとに、研究者が調査する方法がある。PF事業者による審査を通った研究者に、APIやデータセットを無料で提供するものだ。

 しかし、昨今こうした研究者向けのデータ公開の範囲が、PF事業者の判断によって狭められているのが現状だ。

 Xは2023年6月に、それまで無料だったAPIアクセスを有料化。高額のため、研究用のデータ取得も事実上、困難な状況となっている。Metaも2024年8月、「クラウドタングル」というSNSの投稿分析などができる機能を廃止。データが公開されなくなったことで偽情報の検証作業が困難になるとして、EUが懸念を示している。

 TikTokは研究者向けAPIを欧米の「非常に限られた研究者のみ」に公開。日本を含むそれ以外の地域には「公開できる方向で検討中」としている(総務省のヒアリング結果より)。

 鳥海教授は「Xの例でも分かるように、トップが変わることでデータ公開の考え方も大きく変わる。問題があった際に、研究者などの第三者が確認できるようデータを出してもらうのが、社会にとって安全なのではないか」と説明する。

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