「パズルキューブ」0.305秒で攻略! なぜ、三菱電機のロボットが“世界一”になれたのか(3/5 ページ)
2024年5月、三菱電機は自社開発した「パズルキューブを最速で解くロボット」がギネス世界記録に認定されたと発表した。わずか0.305秒でパズルキューブを解く動画は広く拡散され、想定以上の反響を得たという。どうやって“世界一”を達成したのか。
世界一の達成を支えた3つの技術
実際にトクファストボットの動く様子を見ると、瞬きをしたら見逃してしまいそうなほどのスピード感で「とにかく速い」ことが分かる。“正確”に“速く”パズルキューブを解くにあたり、「位置決め」「色識別」「機器間の信号接続と制御」の3つの技術がポイントになっているという。
1つめが、まさに三菱電機が証明したかった巻線機の技術を応用したパズルキューブの「位置決め」をする技術だ。巻線機はモーターの製造工程でコイルをつくる際に使用されており、「電線を正確な位置に速く配置する動作制御」が技術の肝となる。このズレなくきれいに電線を巻きつける技術が、高速回転後のパズルキューブを正しく停止させることにつながっているという。
2つめが、AIを用いた色認識アルゴリズムを応用した「色認識」の技術だ。パズルキューブの色を合わせるにあたり、ロボットに設置したカメラで撮影し、AIが色を認識しているのだが、当初のアルゴリズムでは赤やオレンジといった似ている色の認識が難しかった。ブロックの位置やロボットハンドの影によって、同じ色でも見え方に差異があったためだ。
そこで、見え方が異なっていても瞬時に認識するために、色認識アルゴリズムを応用して色の見え方の差異を補正することに。時間はかかるが正確に認識できる賢いAIをベースにして、高速だが時々認識を誤るAIを学習させ、「スピード」と「正確性」を両立できる自動の色認識を実現させた。
3つめは、複数の機器間の「高速な信号接続と制御」の技術となる。パズルキューブを回転させているサーボモーターをはじめ、産業用PC、タッチパネル表示機器、カメラなどの主要機器を自社製品で構成し、機器同士の高速な信号接続と制御をかなえた。
自社の技術の証明として、特注の機器ではなく、すでに発売済の製品だけで構成したのがポイントだという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「電話とトランシーバー」くっつけちゃった! 見たことがない端末が人気のワケ
子どものころトランシーバーを使って遊んでいた。そんな大人も多いと思うが、「いまはスマホで十分」と感じているはず。トランシーバーをつくっていた会社は、いまどのような製品を扱っているのか。生き残り策を取材したところ……。
8万円を超える「カセットコンロ」が完売 イワタニはなぜ“極”めたのか
岩谷産業が高級カセットコンロを発売した。商品名は「イワタニカセットフー “極”」で、価格は8万2500円。ちょっと信じられない価格だが、どのような特徴があるのかというと……。
「コンテナホテル」が郊外にどんどん増えて77店舗に 稼働率80%の理由は?
郊外のロードサイドに、コンテナを並べたビジネスホテルが続々と誕生している。2024年2月末時点で77店舗まで拡大し、稼働率は80%、リピート率は約40%にのぼるという。どんなホテルなのか。
街で見かける「生搾りオレンジジュース自販機」 どういった仕組みなの? 運営元に聞いた
SNSで「生搾りオレンジジュース自販機」が話題になっている。約45秒で搾りたてのオレンジジュースを購入でき、1杯の価格は350〜500円。4月にシンガポールから日本に上陸したアイジュース社に「生搾りオレンジジュース自販機」の戦略を聞いた。


