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やっぱり、セブン&アイの買収提案は悪い話なのか いやいやそうでもない、これだけの理由合理的な判断(4/7 ページ)

小売り大手のセブン&アイが、カナダに本社を置くアリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けました。ネガティブな報道が多い印象がありますが、本当に悪い話なのでしょうか。財務を分析すると……。

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粗利を増やす戦略

 この指摘を受けてか、2022年の決算説明書は、2021年とは打って変わってかなり詳細に記載されています。また、セブン&アイは米国のガソリンスタンド併設型コンビニのスピードウェイを買収をして成長する姿勢も示しました(もちろん、もともと計画されていたのでしょうが)。

 2022年の決算説明資料で、セブン&アイはコンビニの付加価値を日本国内で高めつつ、海外においてはどのような商品が伸びているのかを示していました。

 日本の会計基準を採用していることから、スピードウェイの買収によって暖簾(のれん:時価評価純資産と買収価額の差額)が発生するため、この年からはEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を強調する形で、成長しているという点を見える化し、株主を大きく意識した記載へと変化しました。また、同日に決算説明資料とは別に今後の見通しも示しました。外圧によって大きく変わった年だったのです。


商品の売れ行きなど、具体的にどの商品がどれだけ伸びているかが説明されるようになった(セブン&アイの2021年決算説明資料より抜粋)

 セブン&アイはこのタイミングで、グローバル(基本は米国)におけるコンビニの成長戦略を示しました。具体的には、チルド品なども充実させ、単純に「ガソリンスタンドに併設するコンビニ」ではなく、プライベートブランドなどを出すことによる付加価値の提供で「選ばれるコンビニ」を目指しました。それにより粗利を増やす戦略のため、わらべや日洋(セブンに調理済食品を供給)を誘致、日本の事業での勝ちパターンを米国でも展開していくことを発表しました。


セブン&アイの粗利構成比は商品が多くを占める一方、ACTはガソリンが多くを占めていることを示す図(公表されているIR資料を用いて筆者作成)

 セブン&アイの粗利構成比は加工食品を中心とした商品が多い一方で、ACTはガソリンで稼いでおり、安定的に収益を得ていることが分かります。また、米国における店舗数もセブン&アイが1位で、ACTが2位となっています。

 米国での成長はセブン&アイとACT両者が最重要視していること、米国における店舗数もトップ2であること、互いの強みが異なり補完関係になれる可能性が高いことなどを加味すると、ACTからの買収提案は非常に合理的だと考えています。

 米国での成長を最優先に考えるのであれば、ACTがセブン&アイを買収しようと考えるのは合理的な判断だと考えています。セブン&アイが強いとされるオリジナルの加工食品を手に入れられることになりますし、両社の販路が使えればシェアも稼働率も向上し粗利も上昇させられると考えているのではないでしょうか。

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