「社内公募」続けて約60年 ソニーが新たに編み出した、経営人材の育成法とは:【中編】徹底リサーチ! ソニーの人的資本経営(2/2 ページ)
ソニーグループが半世紀以上にもわたり、社内公募制度を継続してこられたのはなぜなのか。多角経営する同社だからこそ編み出した、経営人材の育成方法とは。
半年間役員1人を独り占め リーダーシップの在り方を学ぶプログラム
岩崎: はい。ソニークロスメンタリングプログラムは、直接の上司ではない 他事業のトップが指導役となり、役員に必要なリーダーシップの在り方を教えるプログラムです。
異なる事業の経営チームと、次期経営人材との戦略的なつながりによって、多様な経営視点を醸成することやグループ間の連携を深めるというねらいがあります。
半年間で、マネジメントスキルやリーダーシップスキル、ビジネス、そしてキャリアなど、さまざまなテーマをもとに定期的にコミュニケーションを行い、メンターが持つ豊富な知見や経験を共有することで、メンティーの視野拡大につなげています。
奈良: ソニーユニバーシティとソニークロスメンタリングプログラムは同時並行で施策を進められているかと思うのですが、ソニークロスメンタリングプログラムも経営人材の育成を目的にした施策ですよね?
岩崎: はい、どちらも経営人材の育成にはなりますが、全く異なるプログラムになっています。
ソニーユニバーシティは1クラス30人で半年間過ごすので、プログラム同期など、多くの人脈を形成できます。
対して、クロスメンタリングプログラムは完全に1対1なんです。あなたの成長のためにこの方をアサインしますと。半年間1人の役員を独り占めです。
われわれ人事部では、この方はクロスメンタリングプログラムに参加してもらいたい、この方はソニーユニバーシティに参加してもらいたいというように、すみ分けをしています。
奈良: 岩崎さんは、クロスメンタリングプログラムの立ち上げをされたとか。ご本人からお話をうかがうことができて光栄です!
これまで、経営人材の育成に関する施策についてお伺いしてきましたが、続いて他の育成施策に関してもお聞きしたいです。
9月26日(木)掲載の後編記事「全く異なる事業間で、どうシナジーを創るか? ソニー人事が挑む難題」では、異なる事業間でシナジーを生むための取り組みについて語ってもらった。
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