「はやぶさ」「こまち」はなぜ連結して走るのか 欠点を上回る分割併合運転のメリット:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)
9月19日、東北新幹線「はやぶさ6号」と秋田新幹線「こまち6号」が走行中に期せずして分離。幸いにも自動的にブレーキが作動して両方とも停車した。事故の原因は調査中。そもそもなぜ「はやぶさ」と「こまち」、「やまびこ」と「つばさ」は連結して走っているのか。連結して走る利点と欠点を見ていく。
新幹線以外も分割、併合運転は多い
2つ以上の列車を連結し、途中の駅で切り離して運転する運用は「分割併合運転」と呼ばれている。多数の懸念、欠点、特別投資が必要とはいえ、分割併合運転は古くからあり、現在まで行われている。欧州では1つの列車で客車ごとに行き先が異なり、別の国に行ってしまう例もあるという。
在来線特急では、寝台特急「サンライズ瀬戸」「サンライズ出雲」が東京〜岡山間で連結している。夜間は保守点検が必要なため運行本数を増やせない。かつては東海道線に夜行列車が多かったけれども、現在はその時間帯のほとんどをJR貨物列車に譲っている。
成田エクスプレスも横浜方面の編成と新宿方面の編成があり、東京駅で連結して成田空港へ向かう。12両編成のうち、6両編成ずつに分割できる編成と、12両分割なしの編成があり、需要に応じて使い分けている。東京から伊豆方面に向かう特急「踊り子」も伊豆急下田行き編成と修善寺行き編成がある。
このほか、特急「あずさ」「かいじ」と「富士回遊」は大月駅で分割併合する。特急「ひだ」も岐阜で大阪発着編成と名古屋発着編成を分割併合する。JR西日本では特急「きのさき」「はしだて」と「まいづる」、JR四国は特急「南風」と「うずしお」など、JR九州は特急「みどり」と「ハウステンボス」が分割併合運転をしている。
大手私鉄では小田急電鉄のロマンスカーの「はこね」と「えのしま」の一部の列車が分割併合運転を実施している。定員が減る欠点を補うため、展望席を持たない30000形EXEが開発された。また東京メトロ直通の60000形MSEも分割対応可能で、中間に連結される先頭車は流線型ではなく平面になっている。なお小田急電鉄は、特別料金不要の急行も江の島方面と小田原方面を分割併合していたけれども、現在は双方とも独立して新宿駅へ直通している。所要時間の短縮を優先し、煩雑な作業を減らしたかったようだ。
60000形MSEは、6両編成の「メトロはこね」と4両編成の「メトロえのしま」に分割可能。連結側の先頭車は連結時の貫通扉を備えて平面になっている(出典:写真AC、小田急ロマンスカー 60000系MSE)
これ以上はキリがないので別図に示す。分割併合が広く行われる理由は「はやぶさ」と「こまち」とほぼ同じ。鉄道事業者にとっては効率が良く、乗客にとっても乗り換えなしという利点がある。乗り換えなしは最も魅力的なサービスの1つで、懸念や欠点を大きく上回ることがお分かりいただけるだろう。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてパソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICETHREETREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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