美容室の倒産が増えているのに、なぜ「特化型店」は好調なのか(4/5 ページ)
帝国データバンクの発表によれば、2024年に発生した美容室の倒産は8月までに139件に達した。年間最多だった2019年(166件)を大きく上回る勢いで推移している。そうした中、特化型の店舗が増えていて……。
アニメキャラの髪色を再現
2015年に創業した「Wille」は、推し活をサポートする美容室として、アニメファンを中心に支持を集めている。
「開店時は一般的な美容室として営業していたのですが、近隣に多かったハイトーンカラーを提供する美容室と差別化を図りたいと考え、アニメキャラクターの髪色を再現する『2.5Dカラー』を考案しました。SNSに投稿していたところ、多くの人がそれを目的に来店するようになりました」(Wille 代表取締役 志賀尚之氏)
最初に話題になったのは、人気アニメ『ラブライブ!』に登場するキャラクターの髪色を再現した投稿だった。“ことりベージュ”と名付けて紹介したところ、女性向けのキュレーションサイトに取り上げられ、そこからSNSを経由して多くの予約が入るように。その後も、『鬼滅の刃』をはじめ人気アニメのキャラクターの髪色を再現した投稿が注目され、「推し活特化型の美容室」として知られるようになった。
Willeの場合、2階と3階の2フロアのうち2階は「推し活特化」としてフィギュアやアニメのポスターなどを飾り、3階は通常のフロアとして営業。推し活向けにとどまらない幅広いメニューを提供しているが、「推し活特化」を打ち出すことで集客に成功している。
2018年からは、人気アニメとコラボした期間限定の「コラボ美容室」の取り組みも始まった。
「コラボ美容室の実施は年に2回ほどで、そのアニメの人気キャラクターをイメージしたヘアスタイルやポイントエクステなどのメニューを提供するほか、店内もコラボ仕様に装飾します。アニメファンの方が興味を持って来店してくださり、新規顧客の獲得につながっています」
志賀氏いわく、来店動機で最も多いのは「アニメ関連のイベントに参加するために、好きなキャラクターの髪色にしたい」だそうだ。ハイトーンカラーは染めたての色が長く継続しないため、イベントの直前に来店する顧客が多いとのこと。染めた髪色をキレイに見せるヘアアレンジを追加注文する顧客もおり、定期的な髪のメンテナンスとは動機が異なっている。
現在、店舗全体の顧客のリピート率は約70%ほど。スタイリストによって異なるが、志賀氏の顧客は、ほぼ全員がアニメキャラクターの髪色をオーダーするという。ここ数年で「推し活特化」と打ち出す美容室が増えているが、パイオニア的存在であることは選ばれやすい要因になっていると志賀氏は話した。
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