日本で「面白いマンガ」が生まれ続けるのは、なぜ?:『漫画ビジネス』(1/4 ページ)
海外に比べて「日本には面白い漫画がたくある」と言われていますが、なぜこうした現象が起きているのでしょうか。背景にあるのは……。
この記事は『漫画ビジネス』(著・菊池健/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。
日本の週刊漫画雑誌のつくり方の特徴として、漫画家1人、編集者1人を基本とする制作ユニットが挙げられます。これは、大量の作品をつくるうえで、低いコストでたくさんの作品を産みだす体制でもありますが、同時にこの体制ゆえに生まれた副産物があります。それは、作品をつくる人数が少ない分、作り手のエゴがむき出しになった作品が生まれやすいということです。
マンガのつくり方は、大きく分けるとマーケットイン型でつくられるものと、プロダクトアウト型でつくられるものがあります。前者は、流行しているストーリーの型に当てはめてつくられるもので、最近でいうと、いわゆる「異世界転生」や「悪役令嬢」といったジャンルが該当します。
ちなみに、「異世界転生」というのは、主人公が事故などのきっかけを経て、別の世界に行くことで物語が始まるような作品のこと。「悪役令嬢」も「異世界転生」から派生したジャンルですが、女性の主人公が別の世界の物語の悪役として転生する作品のことを指します。
後者のプロダクトアウト型は、漫画家の個人的体験や嗜好(しこう)を掘り下げ、物語として昇華させていくようにつくられるものです。日本の伝統的な漫画雑誌の編集部では、どちらかというとこちらを重視してきました。
例えば、週刊少年ジャンプ編集部によるマンガの指南書では、編集部の役割として「人それぞれにある『自分はこういうものが好き』『こんなことが描きたい』『これなら描ける』という衝動に火をつけること」と述べています(※1)。
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