コラム
集英社、講談社、小学館など、マンガ出版社の多くが非上場なワケ:『漫画ビジネス』(3/4 ページ)
日本にはたくさんのマンガ作品がありますが、ヒットを生み出すには上場企業または非上場企業、どちらがいいのでしょうか。
重要なのは人
まず死力を振り絞るのは漫画家です。そこに報いなかったり、あっさり裏切ったりすることを繰り返す組織は、作家の信頼を失い、作家だまりを構成することができませんし、そこに働く編集者の中でも、特に能力の高い人が力を発揮できず、場合によっては転職や不本意な異動などで結果を出せないことになります。
そのうえで、会社組織側の話に限ると、そうした出版社・編集部側の、およそ一般的なビジネス組織ではなかなか考えにくい、非連続で非論理的な、一人ひとりの作家ごとに変わる対応があって、大ヒット作家が育ちます。そして、そうした対応をし続けることを維持できた会社だけが、継続的に大ヒット作品をつくっています。
もともと、上場を狙うITベンチャーや、グローバル大手企業にいた私にとって、この摂理の発見はものすごく新鮮でした。なにせ、普通のビジネス書や、一般に言われるビジネスの方法論が、マンガの制作の現場には全く通用しないのです。
むしろ、そうした絶妙なバランスを保つ現場を維持することが、大ヒット作品をつくるための基礎となっています。そうした仕組みを再現性のある形で言語化しようにも、究極的には「重要なのは人です」くらいのことしか言えないのです。一般的なビジネスの観点で言えば、恐ろしいことです。だから面白いのです。
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