なぜ「ライス残し」で炎上したのか? 家系ラーメン店が抱える深いジレンマ:スピン経済の歩き方(7/8 ページ)
無料サービスで希望したライスを食べずに帰った客に対してラーメン店が投稿した内容が話題になっている。なぜ店側は、ここまで怒りをあらわにしたのだろうか。
情報操作を受け続けている日本人
ラーメンの歴史を現場で見てきた人だけあって、河原氏の認識は、この問題の核心を突いている。実は2000年を境に、われわれ日本人は「長生きしたければラーメンのスープは飲み干してはならぬ」という国家による“健康プロパガンダ”ともいうべき情報操作を受け続けているのだ。
「健康日本21」だ。
これは2000年より開始されたもので、専門家によって国民の健康増進に関する基本的な方向や、国民の健康増進の目標に関する事項などを定めたものだ。そんな「健康日本21」の中でこんな目標が掲げられた。
「食塩については、高血圧予防の観点からは、諸外国では6g以下が推奨され、日本では10g未満が推奨されている)。平成9年では成人1日あたり平均摂取量13.5gと依然過剰摂取の状況にあることから、平均摂取量10g未満を目標とする)(出典:厚生労働省「健康日本21」(栄養・食生活)
この「国策」に基づいて、2000年代から官民一体で「塩分摂取制限キャンペーン」が推進されていく。
しかし、あまり難しいことを言っても国民には伝わらない。身近で誰もがよく食べるようなもので、啓発しよう。そこで目を付けられたのが「ラーメン」だ。
テレビ、新聞、雑誌、そしてネットで健康の専門家が登場して、「飲んだ後のラーメンは体に悪い」「スープを飲み干すのが良くない」などと解説。お上に「マスクをしろ」と言われたら、なんの疑いもなく全国民が守るほどピュアな日本人は、こういう話に対して羊のように従順だ。
かくして、1997年には1日13.5gだった平均摂取量は順調に低下して、2019年には男性が10.9g、女性が9.3gにまで下がっている。
つまり、日本人がラーメンのスープを飲み干さなくなったというと「健康志向」という話になりがちだが、実はそれよりも、政府が仕掛けたプロパガンダにまんまと操られているほうが実態に近いのだ。
その証に、日本人同様に健康志向が強く、日本人よりも平均塩分摂取量の低い外国人は、海外の「RAMEN」の店でグビグビとスープを飲み干している。前出の河原氏も海外の「IPPUDO」についてこう述べる。
「海外でも日本とほぼ同じスープの量なんだけど、彼らは本当によく飲んでくれるね。理由としては、ラーメンはもちろん麺料理なんだけど、海外では“スープ料理”として捉えられている部分も大きいからなんだよね」(クオリティーズ 2023年8月3日)
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