なぜ「ライス残し」で炎上したのか? 家系ラーメン店が抱える深いジレンマ:スピン経済の歩き方(8/8 ページ)
無料サービスで希望したライスを食べずに帰った客に対してラーメン店が投稿した内容が話題になっている。なぜ店側は、ここまで怒りをあらわにしたのだろうか。
今後求められるのは
外国人にとってラーメンは飲み干すべきスープ料理だが、日本人にとってラーメンのスープは、お上が注意喚起をする「健康を損なう毒」になりつつあるのだ。
この嫌な流れは、零細のラーメン店をさらに苦しめることは言うまでもない。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)によれば、健康的な1日当たりの塩分摂取量の目標値は男性が7.5g未満、女性は6.5g未満。国の基準に照らし合わせれば、日本人はまだまだ「塩分取りすぎ」なのだ。
それはつまり、メディアを用いた「ラーメンのスープを飲み干すのは体に悪いですよ」キャンペーンがこれからさらに力強くなっていくということだ。
「豚骨しょうゆベース」で「しょっぱい」と感じる人もいるあのスープを、ライスをお供に最後の一滴まで飲み干そう。そんな家系ラーメン店のビジネスモデルにとって大打撃であることは想像に難くない。
タバコ、アルコールなど「健康日本21」によってビジネスモデルの変更を余儀なくされた業界は多い。その流れは今、ラーメンにもやってきている。これまでの歴史に学べば、残念ながら「ライス無料」でこれを跳ね返すことはできない。
自然に飲み干したくなる、塩分と脂にも配慮した、新しい時代の「家系ラーメンスープ」が必要になってきているのかもしれない。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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