生成AIで金融業界の課題をどう解く? マネロン対策のトップシェア企業に聞いた
NTTデータルウィーブの高橋聡氏(前常務取締役)に現在、金融業界で深刻な問題となっている人材不足への取り組みや生成AI活用について聞いた。
NTTデータグループは国内に約100社のグループ企業を擁する。その中でコンサルティングからシステム開発、運用保守までワンストップソリューション&サービスを提供するITベンダーがNTTデータルウィーブだ。
同社にはユニークな誕生背景がある。同社の前身であるオリベッティはイタリア最大級のコンピュータメーカーだ。現在はイタリアの通信事業者テレコム・イタリアに買収され、傘下に入っている。日本法人である日本オリベッティの金融ビジネス部門、農協やインフラビジネス部門が2020年3月にNTTデータの完全子会社となった。
NTTデータルウィーブはマネーロンダリング対策にも強みを有していて、地域金融機関の約47%が同社のテロ資金防止、金融犯罪対策の「マネーロンダリング対策システム」を利用していて、国内でトップシェアを維持している。NTTデータルウィーブの高橋聡氏(前常務取締役)に、金融業界で深刻な課題となっている人材不足への取り組みや生成AI活用について聞いた。
圧倒的なITエンジニア不足 どうカバーする?
ルウィーブ(LUWEAVE)とは、「光・誇り」を意味するラテン語“LUX”と、「紡ぐ」を意味する英語“WEAVE”を組み合わせた造語だ。“先人たちの想いを紡ぎ、大胆で自由なビジネスを創造する。そして、未来に向けて光り輝く社会を紡いでいく。”というメッセージが込められている。
現在、金融業界の一番の課題は人材不足だという。世界的に決済電文フォーマットを統一化する動きがあり、金融通信メッセージの国際標準フォーマット「ISO20022」への取り組みが、金融市場において非常に重要な課題となっている。不正対応、制度対応など欧州を中心とした決済電文のフォーマットが変わり、2025年11月には従来のフォーマットが使えなくなる。それまでに各社はシステムへの対応を済ませる必要がある状況だ。
各金融機関は、メニューを変更してプロジェクトを進めているものの、その変化を下支えするITエンジニアが圧倒的に不足しているという。高橋氏は「難題ではありますが、パートナーさまに協力いただき、人材募集、システム開発効率化などに取り組んでいます」と話す。
「今後、テストを自動化させることによって生産性を高め、より開発負荷を軽減させることで生産性を上げ、少ない人数でも一定規模の開発ができるような取り組みが必要だと考えます。まだ研究開発段階ではあるものの、今後は通常作業をAIに代替させ、人間が最終確認のみを実行する。そんな時代がやってくると思います。生成AIの活用方法が重要な経営課題であり、NTTデータグループも注力しています。弊社でも横展開をしていきたい」
マネロン対策に強み
マネーロンダリング対策も非常に重要な課題だという。
現在、地域金融機関の約47%がNTTデータルウィーブのテロ資金防止、金融犯罪対策の「マネーロンダリング対策システム」を利用し、国内でもトップシェアを維持している。銀行口座での怪しい動きを検知し、リスク管理をし、アラートもするシステムだ。
現在はAIを活用して分析をし、ルールに引っ掛かった案件をアラートで通知。疑わしい取引は中断し、金融庁、警察庁へ報告して、不正アクセス者の情報を提供するといった活用の仕方も検討しているという。
一方で、金融機関にとっては収益を生まない投資になるため、どれだけ費用を費やすかは悩ましい。だが不正取引に関与してしまうと、追徴金を当局から請求される。風評被害も起こり得る問題だ。
「アンチマネーロンダリングの世界的な取り締まり機関にFATF(ファトフ)という組織があります。そこが定期的に各国のマネーロンダリング対策をチェックしています。次の審査がある2028年向けに、システム対応の見直しや運用体制などの取り組み、ソリューション評価などを支援しています」
新規事業を立ち上げ
NTTデータルウィーブは4月に新しい組織を立ち上げた。金融事業・農協事業・ネットワークインフラという従来取り組んできた領域以外で、新しい商材やソリューションを提供する狙いだ。国内外のスタートアップとの協業により、最先端技術に取り込む。
スタートとして、まずフリーアドレスの予約管理システムを作った。フリーアドレスの導入を検討中の顧客に対し、座席予約や備品管理、会議室予約システムを提供していく構えだ。仕事内容に合わせて働く場所を選ぶ働き方「アクティビティー・ベースド・ワーキング(ABW : Activity Based Working)」の観点から、同社のオフィスも作り替えた。本来の仕事に取り組みやすいよう、実際に社内でも本システムを利用。拡販もしている。
AIを用いて必要な情報を抽出するソリューションも検討中だ。ビジネスドキュメントは、会社で毎回フォーマットやレイアウトが異なり、表の有無や表示方法の違いも発生する。こういった課題に対し、例えば米Nanonets社は、どのようなドキュメントであっても、独自のAIを用いて必要な情報を得られるソリューションを提供している。これまで人にしかできなかった作業を、デジタル化によって効率化したソリューションだ。国内外の最先端スタートアップと結び付くことで、さまざまな社会課題を解決できると考える。
「今後、国内外の最先端テクノロジーを取り込み、生成AI技術などを活用していくことで、お客さまの期待を超える価値『Make Wonders』という感動を提供していきたいと考えています」
著者紹介:平野貴之
ベアーレ・コンサルティング株式会社 代表取締役社長(CEO)。
イタリア・オリベッティ社に入社し、英国ケンブリッジ大学との共同最先端技術の部隊「マルチメディアタスクホース」に選ばれ、NTT、日本IBMなど最先端技術販売に成功し、社長賞、トップセールスなど多数受賞。その後、日本初上陸最先端テクノロジーに魅かれ、米国DirecTV技術を利用した通信衛星インターネットサービス会社の立ち上げに設立から従事し、ソニーミュージック、ソフトバンク(当時、日本テレコム)、日立電線などから3億5000万円の出資を受け新会社ダイレクトインターネット社設立に成功。
日本をはじめ、香港、マレーシア、インドネシア、シンガポール、オーストラリアなどグローバルビジネスデベロップメントも経験。
最先端テクノロジーを誰でも、いつでも、どこでも利用できるような、豊かな未来創りに少しでも役立っていきたい、もっとスピード感のある日本社会、そして幸せな生活プラットフォーム作りを支援し、提供していくために、1996年ベアーレ・コンサルティング株式会社を設立。
イスラエルビジネスのパイオニアとして、2001年からイスラエルハイテクスタートアップ企業への支援事業をスタート、現在も支援事業を拡大中。
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