日本でマンガが広がった背景に、どんな「仕組み」があったのか:『漫画ビジネス』(1/4 ページ)
30代以上の人にとって、マンガと言えば「紙の雑誌」「紙の単行本」を想像する人が多いと思いますが、そもそもなぜ日本でマンガがこれほど普及したのでしょうか。
この記事は『漫画ビジネス』(著・菊池健/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。
30代以上の人にとって、マンガと言えば紙の雑誌、紙の単行本であることが当たり前だったと思います。日本の少年少女は、多くの人が、小さなころから、学校、家、飲食店など、ありとあらゆる生活シーンの中で、紙のマンガに囲まれて育ってきました。
もちろん、家庭の教育方針でマンガに触れないように育てられた人もいるかと思いますが、それにしても昔は、電車の網棚や道端の古紙交換など、街で暮らしているだけで、マンガというものが目に入るシーンは本当に多かったでしょう。
なぜ、そこまでマンガがあまねく日本に広がったのか?
これはさまざまな意見がありますが、いわゆる「再販委託制度」と言われる「再販売価格維持制度(再販制度)」と「委託販売制度」の2つの、書籍流通の制度が大きな役割を果たしました。
再販制度は、1953年に始まった制度で、書店で販売される書籍の販売価格を、地域の格差なく一定価格で販売するよう定めた制度です。本のみは、独禁法の縛りから外し、ディスカウントを基本的に禁じる制度です。
委託販売制度については、以下「出版科学研究所」のサイトから引用します。
出版社・販売会社(取次)・書店の三者での契約に基づき、定められた期間内であれば書店は売れ残ったものについて返品が認められる出版物販売方法。日本の出版物の大半がこのシステムを利用している。メリットとしては、「書店は安心して仕入ができ、さまざまな出版物を積極的に陳列できる」「出版社は多くの書店店頭で現物の本で宣伝ができる」
本記事では、現在の漫画ビジネスについてお伝えするため、その制度や歴史については、最低限触れるにとどめます。これらの制度についてより詳しく知りたい方は、出版科学研究所のサイトや、『マンガ産業論』(著・中野晴行/筑摩書房)などを参照ください。
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