日本でマンガが広がった背景に、どんな「仕組み」があったのか:『漫画ビジネス』(2/4 ページ)
30代以上の人にとって、マンガと言えば「紙の雑誌」「紙の単行本」を想像する人が多いと思いますが、そもそもなぜ日本でマンガがこれほど普及したのでしょうか。
書籍や雑誌を流通させるインフラ
さて、これらの制度は、昭和の時代に全国の駅や街の単位で小さな書店の経営を成り立たせたり、地方の雑貨屋、スーパーマーケット、駄菓子屋、駅のキオスク、コンビニまで、全国津々浦々あまねく、書籍や雑誌を流通させるインフラとなりました。
国土が狭く、人口密度と識字率が高い日本にとって、この流通網は2010年代のスマホの普及や電子書籍を含めたデジタルコンテンツの普及までの間、他国に類を見ないレベルで機能し、発展しました。国民が本を気軽に読めるということは、国民の知識を富ませ、娯楽をあまねく届けるということにもなります。国益にも資することでした。
この中でも特に、雑誌流通という仕組みは、漫画雑誌、特に少年誌から始まった漫画週刊誌を、全国に大量に流通させることを後押ししました。また、この安価な流通費用で広範に雑誌を流通する仕組みに載せ「雑誌扱いコミックス」という少々特殊な扱いで漫画単行本を雑誌と同じルートで流通するようになり、漫画単行本を広く流通させることにつながりました。
一般の書籍ルートは基本的に書店を対象とする流通ルートですが、雑誌扱いルートでは、書店以外のさまざまな店舗、例えば地方に多い雑貨屋や駄菓子屋など、より広いルートに雑誌を流通します。そのため、このルートに漫画単行本を載せたことで、より広く漫画が広がったということにつながりました。
さて、この制度をもとに、マンガに限らず書籍や雑誌が全国のさまざまな店舗に広がった日本ですが、その結果、本や雑誌の置かれる棚の前には、大量の読者となるお客さまが回遊することとなりました。そこから漫画雑誌の中にある作品は、立ち読み、購入、回し読みや購読雑誌交換など、さまざまなかたちで子どもたちにマンガを届けられることになりました。
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